Interview:ダイナミックな「刺繍」でファッションとアートの境界を越える/二宮佐和子

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loftwork.comでは、5/29〜6/18の期間『TRANS CRAFT, INTO ARTS』というテーマで、4人のクリエイターのアートワークを紹介しています。
本特集では、「クラフト」というジャンルの領域を越えて、新しい表現を見出す4名のアーティストたちにフォーカスしながら、あらゆる人々を夢中にさせるクラフトアートの魅力をひも解いていきます。
ここでは特集に関連して、4人のアーティストそれぞれに制作の背景についてインタビューします。


「刺繍」と聞くと、かわいらしいアップリケやステッチなどの「手芸」を想像しがちです。刺繍アーティスト・二宮佐和子さんの作品は、そんな「刺繍」のイメージを刷新する大胆なスタイルで、ファッションとアートの間を行き来する作品を制作しています。大きな山の作品動物の頭が立体的に刺繍された帽子など、ダイナミックかつメッセージ性の高い作品を制作しながら、インドの農村の女性に刺繍を教え仕事を創出するプロジェクトに取り組むなど、その活動はとどまることを知りません。

いつもパワフルでエネルギッシュな二宮さんの創作への原動力や作品に込めたメッセージについて伺いました。


>>特集:TRANS CRAFTS, INTO ARTS – 熱狂するクラフトアート特集



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《Himaraya boots》



ーもともとはグラフィックデザインやイラストレーションの勉強をしていたとのことですが、どんなきっかけで「刺繍」を創作活動の表現方法として取り入れたのでしょうか?

ふとしたきっかけで、なんとなく洋服に針と糸を刺してみたのが始まりです。周りの人から「いいね!」と言ってもらい、注文を受けたりするうちに、どんどんこの手法にはまっていきました。ファッションにも興味があったので、ファッションと親和性が高い刺繍を用いれば絵を着ることができる!というのがとても嬉しくて始めた、というのもあります。

グラフィックデザインをやっていた時は友人とユニットを組んでいたのですが、どちらかというとわたしは素材を作る側で、だんだんデザインより絵を描く方にシフトしました。もともと手を動かして作るのが好きだったみたいです。



ー刺繍作品について伺いたいのですが、二宮さんの刺繍はダイナミックな縫い方が印象的です。同時に、街の風景や人物のポーズや表情など、繊細なゆらぎを糸で表現されているように見えます。二宮さんが考える、にとって、糸による表現の魅力やおもしろさとはなんですか?

もともと絵を描くのが好きだったので、刺繍をしている時は、絵を描く時に近い感覚かもしれません。

ただ絵と違うのは糸を使う事で、必然的に立体的な表現になることですね。1本の糸でも、角度によって違う色に見えたり、グラデーションがうまれたり、色の幅があっておもしろいです。刺繍糸の他に毛糸もよく使うのですが、毛糸は種類が豊富で、ふわふわなものやツヤツヤなものなど質感が様々なので、それぞれ違う表現ができます。

最近は、糸だけじゃなくて、針に通せればどんなものでも刺繍できる、と思う部分があるので、そうするともう、可能性は未知数です。刺繍と言うとどうしても手芸や手作り、趣味のイメージが強いですよね。刺繍でここまでできるのか!というような表現を追求することで、古い刺繍のイメージを払拭したいと思っています。



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《embroidery as fashion》



ー子供のころの体験で、のちの作品作りに影響を受けたものはありますか?

いまでもよく覚えてますが、中学生くらいの頃に学校から帰って来てベッドでごろごろしていたら、ラジオからpizzicato fiveの『東京は夜の七時』という曲が流れて。ちょうど夕暮れの時間で部屋も赤く染まってて、曲を聞きながら「なんてかっこいいんだ…!」とドキドキした覚えがあります。

それまでわたしは、3つ年上の兄にべったりで兄の真似っこばかりしていました。男の子っぽい格好をしたり、なんだかよくわからないレゲエのCDを買ったり…

でも、その曲に出会ってからは音楽のことを調べていくうちに、映画やファッションなどにも興味を持ち、だんだん自分自身が何を好きなのかがわかってくるようになりました。自我の目覚めですね。



ー音楽をきっかけに、自分の興味や好きなものにフォーカスされ始めたんですね!
刺繍で山を縫う作品をよく制作されていますね。キャップやブーツのようなファッションにまつわるものから、幅2mを超える大きなインスタレーションまでさまざまありますが、二宮さんにとって山はどんな存在なのですか?


小さい頃によく家族で山登りをしたり、トレッキングクラブで山を登ったりしていましたが、
大人になってからはめっきりです。

なにか自分では到底かなわない大きな作品を作りたい、と思ったときに、山のことを思い出したんです。山への憧れと超えられない自然の美しさ、過酷な環境にも関わらずそこへ果敢に挑戦する人間の生々しさ、生と死が行き来する場所。

山を刺繍する行為は、超えられない何かに向かって挑戦し続けたいという思いからなのかもしれません。



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《embroidery mountain “K2”》



ー「本能のままに生きる」をテーマにした「アニマリズム」の作品シリーズについて、刺繍でありながらシロクマやトナカイが、立体作品のようで印象的です。どんな思いから、この作品を制作したのですか?

「アニマリズム」は、アニマルとアニミズム(*1)を掛けて付けたタイトルです。本能のままに生きる動物や植物には、憧れがあります。

ちょうどこの作品を作る前にアイヌ文化のことを調べていて、「イオマンテ(*2)」の儀式について知りました。この作品は見た目はファンシーですが、イオマンテの儀式のように、動物の頭部を祭るような厳かな気持ちで制作しました。


*1 アミニズム:無機物をふくむすべてのものの中に霊魂・霊が宿っているという考え方のこと。
*2 イオマンテ:アイヌの儀礼のひとつで、ヒグマなどの動物を殺してその魂であるカムイを神々の世界 (kamuy mosir) に送り帰す祭りのこと。



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《「ANIMALISM」アニマリズム》



ー昨年から、フェリシモさんと取り組んでいた「STITCH BY STITCH PROJECT」では、インドで綿栽培をしている村の女性たちにあたらしい職業をつくることをめざして刺繍の指導をされていますね。この仕事の中で感じたことや印象的だった出来事を教えて下さい。また、刺繍を習得することで彼女たちにどんな未来をつくってほしいですか?

このプロジェクトはインドの中東部にある、オリッサ州のレベッド村というところで行っているのですが、ここへ行くにはデリーから飛行機で2時間、そこから車で7時間、さらに奥地へでこぼこ道を車で1時間走ります。

お店もなければテレビもトイレもない、電気がギリギリとおってるような、秘境みたいな場所です。また、言葉が通じないので、わたしの日本語をいったん英語に訳してもらい、さらに現地のオリア語に訳してもらう、という二重通訳が必要です。

でも実際に教える時は、ひとりひとりと向き合いながら手取り足取りといった感じになるので、言葉は必要なくなってきます。ジェスチャーと、何通りかの笑い方と、「yes」や「OK」「good!」 だけで、お互いに意思疎通ができるような気になってきます。

それは、とても驚きと感動に満ちた経験です。彼女たちとは一年に一度しか会えないので、会えない間はネットを介して、刺繍の指導を行っています。とても純粋でまっさらなので飲み込みも早く、もう既にフェリシモのサイトで彼女たちの刺繍作品が買えるようになっています。

自分の手で作ったものを販売して、生きる為のお金を得ることができる、というのはとても感動的なできごとです。女性の地位が男性と同等でないインドでは、なおさらのことだと思います。彼女たちが刺繍を習得して収入を得る事で、自分の思い描く未来を築いてくれたら、こんなに幸せなことはありません。

そして、いまわたしが教えている子たちが、さらに下の子へ教えるようになり、どんどん女性が手に職を付けるという事が広がっていったらいいなと思います。



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二宮さんのブログより



ー今後チャレンジしたいことや目標があれば教えてください。

刺繍のよいところは、針と糸があればどこでもできるという所です。この針と糸をもって、日本中、世界中、いろんな場所へ行って人々と関わり合いたいです。

わたしは人にモノを教えるのが苦手だと思っていたのですが、最近、ワークショップという形でいろんなところへ呼んでいただき、大人、子ども、男性、女性、いろんな人と刺繍をする機会をもらっています。刺繍がいろんな垣根を越えたコミュニケーションのきっかけになれたら素晴らしいなと思います。



ー告知等あればどうぞ!

7月1日と2日に、京都にあるMTRL KYOTOにて詩集と刺繍のワークショップを行ないます。まだ若干数、参加者募集中です!

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「POETIC SEWING PROJECT -刺繍と詩集と雨と未知」
https://www.facebook.com/events/1689148837766358/?sw_fnr_id=3907169932
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8月にアメリカのポートランドでポップアップショップをします。
10月には大阪で初めての個展をさせていただきます。

HPtwitterinstagramなどで情報をあげて行く予定なので、ぜひチェックしてください。
タイミングが合いましたら、見に来ていただけたら嬉しいです!

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ホームページ:http://sawakopurega.tumblr.com/
Twitter:@sawako_purega
Instagram:sawako_purega
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ー刺繍を通したコミュケーション、素敵です。二宮さん、どうもありがとうございました!




Profile:


portrait二宮 佐和子(にのみやさわこ/SAWAKO NINOMIYA)
絵画、ファッション、インスタレーション、平面、立体、空間、とあらゆるものを糸と針で、縫い刺しする刺繍アーティスト。
企業とのコラボレーションによる商品やプロジェクト開発、アートフェアに参加の他、ギャラリーやイベントで作品を発表、展示販売している。

Website:http://sawakopurega.tumblr.com
http://www.loftwork.com/portfolios/ninomiyasawako


Comments

文中の間違い。アミニズム じゃなくて、アニミズムね。

posted by   on 06.16.17 at 1:38 pm
Avatar of Loftwork.com

ご指摘ありがとうございました。修正いたしました。

posted by Loftwork.com on 08.05.17 at 12:46 am

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