自由で深い、一期一会の印刷体験―竹尾の紙 × Papertype(紙活字) ワークショップ

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「印刷」というと、みなさんはまず何を想像しますか? オフィスや学校のプリンター、それとも便利なオンデマンド印刷サービス?

わたしたちが普段利用している「印刷」は、入稿したり印刷ボタンを押すだけでほとんど均質に刷り上がるのがあたりまえ。ただ、プリンターの中、あるいは印刷工場の中でなにが起こっているかを知る人は、あまり多くはないかもしれません。

印刷の起源である活版印刷を、だれもがもっと手軽に楽しめるように―そんな思いから,古くてあたらしいアナログ印刷システム『紙活字® / Papertype®』(以下、Papertype)を開発したのが、Paper Parade Printing を主宰する和田由里子さん。和田さんはおよそ10年をかけて「活版印刷の根源的なおもしろしさ」を体験できる、ちいさなキットを開発しました。その最大の特徴は、活字自体がすべて紙でできていること。さらに印刷機(プレス機)から専用インク、専用書体までデザイン・開発した渾身のキットです。


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さる5月27日、FabCafe Tokyo で、和田さんのPapertypeによる活版印刷をさまざまな紙で体験する「ぜんぶ紙でつくる! 活版印刷ワークショップ」を開催しました。紙でできた版で、紙に刷る。古くて新しいアナログ印刷体験のようすをお伝えします。


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はじめに、Papertypeの構造について和田さんからレクチャーがありました。紙でできた活版の中には、金属の活版と同じだけの機能が備わっています。


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班の高さを合わせるための「土手」だけでなく、「エックスハイト(小文字の高さ)」や「キャップハイト(大文字の高さ)」「ベースライン」もあるので、手で文字組みをするときの目安になります。


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和田さんいわく、Papertype® ワークショップのたのしみかたは「自由!」。 紙でできた活版に傷をつけながら模様や絵を描いたり、印刷面のコート部分を剥がしたりすることで、自分だけの版をつくれます。


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和田さんの実演。小さなローラーでたくさんインクを練って、和田さん特製のプレス機で印刷します。

このプレス機、じつはあのグーテンベルクの活版印刷機の仕組みをそのまま小さくしたもの。はがき2枚分ほどの大きさのシンプルな木製プレス機から、さまざまな表情のプリントが生まれます。

Papertype® は、子どもから大人まで、だれもが扱えるシンプルなアナログ印刷システム。自分でインク量を調節しながら濃く印刷することも、薄く印刷してわざとカスレを作ることもできます。

こんなふうに書くと「かんたんそう!」と思われそうですね。ところが実際に刷ってみると、なかなか思った通りにならない。この「ちょっとむずかしい」具合が、Papertype にハマるポイントだったりします。


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今回のワークショップのみどころは、紙の商社・竹尾のファインペーパーたち! 色も質感・テクスチャもさまざまな10種類のファインペーパーを使って、紙活字とインクの化学反応を思う存分たのしもう、という会です。

通常、活版印刷には平滑(へいかつ)とよばれる、凹凸の少ない紙が好んで使用されます。和田さんがPapertype® のために開発した Papertype Font は、線幅が広いサンセリフ体。紙のテクスチャを活かした印刷表現が楽しめるのではないか…ということで、さまざまなテクスチャの紙で実験します。ワークショップで使用した紙を、ほんの一部ですがご紹介します。


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手前にあるのは、和田さんもよく使用するという「ビオトープGA-FS」です。ハリがあり、クラフト感のある丈夫な紙です。18色あるカラーの中から、今回はより高級感のあるダークカラーを選択。


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こちらの紙は「モフル」。「バニラ」「ペシェ」などとスイーツの名前を色名に使っている、とても柔らかい雰囲気の紙です。表面にあるこまかな「簀(す)の目」模様が特徴。


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こちらは、「サガンGA」。表面に微細かなエンボス加工が施されており、50色ものカラーバリエーションがあります。これら、紙の色・テクスチャと、Papertypeが融合することで、どんな表情が生まれるのでしょうか?


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参加したみなさん、一般的な印刷物の制作ではあまり触れる機会がない個性的な紙たちに、じっくりと触れていました…。

和田さんによるPapertype® と竹尾のファインペーパーについてのレクチャーがおわると、参加したみなさんはそれぞれ自由なスタイルでワークショップを楽しみました。現役の欧文書体デザイナーでもある和田さんと文字組みを練習する人や、FabCafeのレーザーカッターでオリジナル活版をつくる人など。しかし、みんな最後に行き着くところはひとつ。紙とインク、活版でひたすら刷って刷って刷りまくります!


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こちらでは、文字組みを練習中。Papertype Font は、初心者でもきれいに組めるよう設計されているため、タイポグラフィ学習者の入門ツールに向いています。


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ベタで並べるだけでも、きれいに組める!


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こちらでは、オリジナル活版づくりにチャレンジ。今回は、紙に手描きした形をレーザーでカットして、活版にします。


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手描きシェイプの活版で刷ったカードたち。手描き線×アナログ印刷で、とてもいい味が出ていますね。

そして、刷り上がった色とりどりのカードたち!


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自分の手で刷ると、インクのムラやカスレ、版のスクラッチ、紙のテクスチャなど、ひとつひとつの表情が愛おしく感じられるのが不思議です。

カラープリンターと違い、一度Papertypeで刷ったものとまったくおなじ印刷をするのは不可能です。複製印刷なのに、一期一会。さらにアレンジの可能性は無限大。多色刷りや版の上で混色するなどの「応用編」に果敢にチャレンジする姿も見られました。

今回のワークショップに参加した方のほとんどがPapertypeや活版印刷を体験するのは初めてでしたが、ワークが終わる頃にはこんなディープな会話が聞こえてきました。

「このカスレ具合、すごくいい。嫉妬する!」
「紙の質感が活きてるねえ」


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ワークショップでみんなが「カスレ具合」に嫉妬したのがこちらの「A」。サガンのつぶつぶ質感と版のスクラッチ・破れ、インク乗りの組み合わせが絶妙です。「このままスキャンしてTシャツにしたい!」との声も。

普段づかいのカラープリンターやオンデマンド印刷では体験できない、アナログ印刷の楽しさと自由さとがぎゅっとつまった90分でした。参加したみなさんからは、「ずっとやりたかった活版印刷がたくさんできて、たのしかった」「もっとやりたい!」などなど、うれしい声が。

和田さんのPapertypeとのコラボワークショップは、次回もあたらしいプログラムを計画中です。どうかおたのしみに!




協力:株式会社 竹尾 http://www.takeo.co.jp/

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