
子供のころ手のひらを火傷したことがある。
祖父の通夜だった。庭を照らす露台の灯りがあんまりきれいだったので、思わず触ってしまい手のひら一面を火傷した。
煌々と光る美しい白熱灯のフィラメントは点灯時2000度にもなると後で知り、美の吸引力を思い知った。
占いのたぐいは信じないけれど、手のひらから未来を読み取れるとしたら、あの晩わたしの未来は変わったのだと思う。
普通にしていても手相は変わっていくらしい。でも多分、わたしはあの晩自ら、手のひらに現れていた未来を拒否したのだろう。
もしかすると彫刻を仕事にしていた祖父が、白熱灯の美しさによって私をどこかに呼んだのかもしれない。
それはどこなのか。
今はまだわからないけれど、きっとたどり着けると信じている。
そして時々、あの晩の夢のような美しさを思い出して、選ばなかった幻の未来のことを少しだけ思ってみる。
その世界はどんなところだったのだろう?