
その人はデザイナーで、プロダクトデザインがメインだけれど会社のブランドイメージを作る仕事にも関わっていた。手がけた製品のデザインが何度もグッドデザインに選ばれていた。
会社自体は好きになれなかったけれど、今でも街を歩くと知らず知らずにその会社の製品を探している。
もう一人とても気になるあの人は、曲を作りバイオリンやベースやギターを弾く音楽家。
時々「凶器」あるいは「狂気」の域に入って、何を始めるか全くわからない。以前観たライブでは、楽器とともに片手を破壊した。下手から再び現れたとき、負傷した手に黒いガムテープを巻き付けていたのには、客席どころかバンドメンバー全員唖然呆然だった。
二人は良く似ている。笑顔とか声とか、身軽さとか真剣さとか。姿を見ているだけでときめいてしまう。
彼らに対する憧れは、例えば、夜、海まで続く道の両側で白くぼうっと光る蜜柑の花のようなもの。甘い香りに釣られて歩いて行くと、その先の海にはなにかまだわらない怪物がいる。
灯台のようにギラリと光るその目に怖じけづいて動けない。
わたしは海に入れず浜辺に立つ。
彼らの光を遠くの空に感じながら、まだ海を渡る決心がつかない。