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さて、長くなったレポの第二弾。歌舞伎のお話です。
■鳴り物入りでまかりこす
それにしても拍子木や謡い、金や笛の音と動作との連動が素晴らしい。動くときは、
音と調和してするすると、あるいはパキパキと動き、拍子木の音に合わせて随所に
キメポーズが入る、つまり歌舞伎というのは静と動が両方見せ場になって
おるわけで、舞でもあり、ストーリーテリングの劇でもあり、そして静止画としても
美しいという何とも贅沢な演し物なんだと思います。
もちろん舞といっても優雅なばかりではなく、動作は作中の人物の性格によって
粗雑だったり滑稽だったり。劇としても実に高度な所もポイントです。
ところでキメ場面や登場、退場のシーンに所々拍手がわいたり「ヨッ!●●屋!」なん
て声がかかるのも歌舞伎たるゆえんでしょう。しかし誰がナニ屋なのか手元のパンフ
にも載っておらず、よほど詳しいファンしか呼びかけ出来ないと思われます。
そもそも、パンフには「団十郎」とかしか書いてない訳です。名字が市川、だと
いうのも知ってなきゃリンクしない。
みんな歌舞伎俳優ってのは下の名前は違うんでしょうかね。
む? 待てよ。名前が一緒の可能性があるから「●●屋」と区別するのか。
その「●●屋」も「成田屋!」「高島屋!」くらいなら聞いていても漢字も想像
出来るのですが、聞いたこともない名前だと漢字変換すらままなりません。
舞台に耳を集中しながら何となくその呼びかけを聞いていたのですが──。
「よっ!ヒマラヤ!」
あー……ヒマラヤ……ヒマラヤぁ!?Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)
ホントはなんと言ったのかついぞわからぬままでした。
暇羅屋とかだったらどうしよう……。
■ただ夢幻のごときなり
今回は非常にコミカルな演目で、随所に笑いがこぼれ、実に楽しいネタ満載だったの
ですが、(北京オリンピックとか時事ネタまで出てきてましたよ。子役が卓球の
愛ちゃんのまねしたりとか。大受けでした)、三階席で俯瞰する構図だった事からも、
とにかくその動きの美しさに呆然としておりました。立ち居振る舞いがそらもう
ナニをどうしたらここまで、というくらい決まる。肩の揺すり方一つで感情や
正体を見せる、これが芸ってもんなんですな。いや感服です。
舞は武に通ず──とは日本人では誰でも知っている概念だろうとは
思いますが、まさに。
ぎりぎりまで無駄を削いだ動きは抜き身の刀身のように、実に美しい。
時代劇の殺陣と違って歌舞伎の戦闘シーンは割にスローリーです(早いパタ
ーンもあり、これも見ることが出来ます)。しかし、その美しさ。押さた動きの、なん
となめらかに無駄のない事か。
トンボを切る脇を固める俳優達や、音も立てずに動き、影にしみこむように舞台に
ひそむ黒子も相当の見物です。二人一度にトンボを切ったときの速度と高さが
ぴたりと同じだったり、手で地面を押した位置にぴたりと足がついたり。
棒や十手を振り回す、突く、はねのける、押さえ、そして拍子木の音でピタリと決まる。
戦闘シーンの緩やかな演武で素晴らしいのは、たとえば腕を突き上げるその動き一つ
とっても、それが有るべき方向にぴたりと向き、少しも力が逃げるように見えない。
カツンとはまる。
舞としてありながらもそれが武としてきちんと納得できる動きになっているのです。
これは理屈ではない。たぶん誰にも「正しい」と思わせる動きであり、美です。
言葉の説明は要らないから、海外の人にもとてもいいでしょう。
しかも完全に無駄を削いだ所作を基本として、そこに少し遊びを持たせた動きに
するだけで「なぶる」要素を見せたり、「荒い、自棄になった」動きが伝わる。
たいした物です。
あいにくと無骨なタチで舞には全くの素養も教養もないので専門的な事はなにも
いえないのですが、そんな私でも実に納得でき感心した見事な戦闘シーンの演武
でした。ちなみに光り物は結構舞台に突き立てたりしてたから、あれで打たれたら
たぶんイタイと思います(笑)。
■舞台装置
いやー驚きました。回転するわせり上がるわ落ちるわ。屋根の上で大立ち回り
してるなーと思ったら屋根部分が役者ごとぱたんと90度むこうにひっくり返り
(役者落ちたんじゃねえか?)城門の2階がニューっとせり上がって現れ、最後には
その部分もせり上がって地面部分が出てくるというとてつもないでかい場面転換。
なんですか、こりゃ映画ですか? カリオストロの塔のシーンを舞台でやっちまった
くらいあり得ない上下の見せ方。呆然です。回転ってのも向こう側にパタン、
だけではなく、円卓の上に乗ってるかのごとく舞台がぐるーんと回転したりして。
いやいやいや、いったい舞台袖はどんくらい広いのだ! それでなくとも楽の音
を演奏してるチームがいる場所も必要なのに。
■ストーリー
ここで私が超訳でストーリーを説明してもいいのですが、実際に舞台を見たときの面白
さを削いでしまうので、あらすじの書いたURLだけ表示。入場者が渡されるペラ1のパン
フと同じ文言です。
以下ちょいとネタバレ。
【青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)】
タイトルがどういう意味なのかは今ひとつわからんのですが、これは結局5人の妙な因
縁話。日本駄右衛門という大泥棒の元に4人の子分がついて、曰く白浪5人男。
主役は石川五右衛門がモデルのようですね。
しかし5人男といっても、目立つキャラとそーでないやつがいて、最後まで
「あいつ何で居ったんや?」という気の毒なキャラも。
さらに最後の5分だけ登場するキャラとかもいて、見てる方は割と混乱するんですが(笑)。
「赤星の見せ場はいつ来るんや。あいつ今のとこヘタレれで終わってるで」
「確かに。しかし忠信利平もあまり目立たんな」
「いやでも利平は最初のシーンをみるだに、やるときは出来ると見た。強いし」
「やれば出来る子か」
「せや。けど、赤星はええとこなしや。利平に助けてもらわんかったらナニも
盗れてへんやん」
「確かに……。でも見えないところで頑張ってるんじゃないかな」
「盗みは下手やけど経理にやけに詳しいとか、闇で現金に換えるのが異様に
上手いとか?」
「そうそう」
「地味や……! orz」
とか。
「そういえば最初出てきた千寿姫、あれなんやったんや」
「うーん」
「天然キャラやったけど劇中で一番思い切りのいいキャラやったかもしれん」
「確かに……深層の令嬢だしなー」
「やっぱりバランス的にギャルも一人くらい入れておかないと、男ばっかりでむさ苦し
いからじゃない?」
「確かに……て、言うても歌舞伎俳優て全員男やん!」
とか。まあ姫はお宝を泥棒再度に渡してしまうという大切な役所が有るわけですが。
【三升猿曲舞(しかくばしらさるのくせまい)】
10分そこそこの舞です。モデルは木下籐吉郎。謡にはあらゆるところに「サル」を
ひっかけています。
「コレは当時大変な人気で……」当時っていつやと思ってガイドを聞いてると、
なんと「室町時代」。1300年代ですか……!
なんというかもう、言葉がないですな。
■纏め
こりゃさぞかし当時は大人気の娯楽だったんだろうなあ! 見て楽しい、聞いて
楽しい至上のエンターテインメントです。
確かにこれは目がさめるほど派手な「傾奇」。
原題でも十分、そして歴史を感じることが出来る分十二分に楽しむことが出来る演し物です。
是非皆様も機会があればどうぞ
▽asahi.com 「散ってこそヒーロー」 黙阿弥の作品を5月団菊祭で
▽FujiSankei Business i.【かぶく心】粋で華やかな団菊祭 思いやる芝居心に薫風
相変わらずの長文、おつきあいありがとうございました。
2008/05/27
19:55
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歌舞伎団菊祭団十郎舞は武に通ず菊五郎青砥稿花紅彩画あおとぞうしはなのにしきえ三升猿曲舞しかくばしらさるのくせまい