知識・情報
皆さんは過去を振り返って「あのときああすれば良かった、こうすればよかった」と考える方でしょうか? 自慢ではありませんが、わたしはこれが非常に苦手です。全力でゴールを切ったあとは完全燃焼で白く燃え尽きる、そりゃもうジョーも裸足で逃げ出すくらい燃え尽き症候群です。おかげで中学の時の英語の成績も「仮定法過去」「仮定法現在」の所だけやたら悪かったし、持久走では学年5指に食い込んでゴールした後はこむらがえりを起こしてのたうち回る始末(文化系だったもんで)……まあそんなことはさておき(笑)。
先日、トリンプ・インターナショナル・ジャパンの吉越社長のお話を聞く機会に恵まれました。
まあブログ炎上やらなにやらで色々有名な方ではあるそうですが、先入観なしにお話を聞くと、非常に分かりやすく物事を伝える、楽しく聞ける、また内容が興味深いという三拍子揃った話し上手な方でした。ボディランゲージ、滑舌、話し方のリズムや緩急、スピード、生き生きとした目線など、プレゼンで見習うべき所も大きかったです。
内容はいま流行りのライフハック、もしくはGTDの流れになるんでしょうか。
いかにすれば業務改善が出来るか――もっと柔らかく言えばどうやったら仕事が楽しくはかどるか、というお話。誰にでも為になるのではないでしょうか。
そこで今回は社長のお話の感想などを少し。また非常に長文になりそうな予感です(笑)。
(というか長すぎるな……後で削ります。すいません……)
■トリンプ・インターナショナルとは
ワコールに次ぐインナーウェアメーカー。ドイツに本社を置く外資系の会社です。
吉越さんは83年香港社に入社、86年日本社に異動、その後様々な改革を行っている
方です。
・業界シェア: 1991年:4.4% ⇒ 2003年:11.5%
・売り上げ:5倍
・開発スピード: 約180日 ⇒ 104日(現在70日にトライ中)
・社員数:いまも昔も120数人前後
■「仕事」とは?
よく「アナタにとって仕事とはなんでしょう?」という質問があるかと思います。
「生活の手段さ。金さえ貰えれば別になんでもいいよ」
「趣味がいつのまにやら飯のタネになった」
などなど、ひとそれぞれの意見があることでしょう。ちなみにWikipediaの
「仕事中毒(ワーカホリック)」の項目を見ると、「仕事=アイデンティティ」
なんて状態も報告されています。そういう人も居るでしょう。
吉越社長の意見は明快です。
「仕事はゲーム。目標とするゴールがあり、ルールがあってクリアすべきもの」
ゲームなので面白くあるべき。また遊びじゃないので、ルール逸脱しちゃダメ
だし、勝手にゲームを途中でこっそり抜けるのもNGです。
この方向性は非常に分かりやすいです。社員一人ひとりやっている仕事は違うので、
細かくルールは違うわけですが、大枠として「利益を生み出すこと」、という
社員共通の目標もある。
当然勝者には報償があり、敗者にはペナルティがあります。このペナルティで
やる気を削ぐのでは本末転倒なので、より真剣にゲームに打ち込むようルールを
上手く作るのが経営側の手腕であり、会社というのはこの大きなゲーム盤に
あたるのではないかと思うわけです。
そしてゲームであれば楽しいのは当然で、エンジョイしていればいいアイディア
も自然とわいてくる。無理矢理ポジティブシンキングにする必要すらない。
プレイヤーはそれぞれ社員。吉越社長の考え方のルーツにはこれがあるのだなと
話を聞いていて思いました。
■社内の情報を全てオープンにすること。
仕事がゲームであると規定するなら、当然ルールが必要です。大枠のゴールが
ここだぞ、という表示も必要だし、個々人が何をやってるか、その量と質が
妥当だと全員が認識しておらねばゲームのルールになりません。そこで
トリンプでは徹底的に社員の情報がオープンにされ、情報秘匿はペナルティが
課されるというシステムがあるそうです。これをしておけば例えば個人に不当に
仕事が振られすぎていると全員が理解出来る。量と質の均等化も行えるという
寸法です。
■担当者に任せる、ということ
一人ひとりのゲームなので、上司は担当者に全てを任せることもまたルールです。
「上司がすべきはコントロールではなく、(出来ているかの)チェックである」
ということ。「部下にとって何よりもご褒美は上司が口を出さないことです」
とも言っておられるとおり、自分のゲームだと思えばやる気も出る。
なるほど、その通りだなと思うわけです。
■早く、早く、早く
もう一点吉越社長が強調しておられるのがスピードというファクター。のんびり
した日本企業は国際力が非常に弱い。国際社会のスピードについていくためには、
社員にのんびりゲームをされていては到底おいつかないのです。
そこで個々人のゲームに「いついつまでに誰が」という時間設定を細かく設定し、
ゲームのルールとした。
基本、「明日朝までに」片づける作業をトリンプでは毎日10個以上持っている
そうです。
残業をすると罰金になるため、6時になったらみんな仕事は終了。そのスピード
感は想像するにあまりあります。これを行い、トリンプでは改革を始めた頃から
売り上げは5倍に伸びたのに社員総数はほぼ横ばいだそうです。
単純計算で考えてもスピードは5倍という事ですね。
■振り返って思うこと
話を聞いていて、ずっと前職について考えていました。前職は500人ほどの社員
がいるメーカー。130人ほどのトリンプインターナショナル・ジャパンよりは
少し大きいですが、一体何が違ったのだろうと。
トリンプ・インターナショナル・ジャパンで上記のゲームを行うために取り入れられた
施策は多数。
「情報共有のための会議を、全国で共有出来る形で早朝に行う」「会議は報告会
ではなく決定の場」「規定時間になればフロアの電源が落ちる」「社長は何より
現場を知っておらねばならず、社長が現場に降りていくべき」……。
表層だけとってみれば、これらの多くはわたしの前職でも行われていたことです。
結果として売り上げが上がったトリンプに比べ、業界シェアがどんどん落ちて
いった前職。何が違ったのでしょう?
振り返ってみて思うことは、やはり「最終的に何をしたいから、いまこれを
行わねばならん」という全員の共通認識のなさと「『いつまでに、誰が行う』の
ルールがなかったこと」の2点だけで、あれほど致命的に違いが出たのだろう
なあと思います。
前職でも早朝に会議がありました。しかしこの会議は「◎◎になりました」とい
う報告会に近く、「誰が、何を、いつまでに」をその場で決めて裁可をとる
ものではなかった。早朝会議は誰でも希望すれば(社外でも!)参加出来るそう
ですが、それもなかったですねえ。
また社長がフロアをうろついていたのは非常に良かったのですが、そこで自社の
情報を共有しようという体質がなかったために「声の大きい人」は社長に直接
直訴も出来たけれど、例えば営業の現場などの遠隔地の社員は逆に声が通らず、
偏りが生じました。全体的に情報の流通があちこちで動脈硬化をおこしていた
なあと思います。そして、イエスマンが上司についてしまったチームは非常に
苦労したものです。
一番致命的だったのは、会社が何をどのようにどうしていきたいかという共通認識
が徹底しておらず、「これじゃいかん」と誰もが思っても、全員が船端に座って
必死でオールを漕いでいるだけで、船は進んではいないのに、
周りにばっちゃばっちゃと波が立っているだけに見えたこと――。
しかも個々人は迷走の自覚がなく「俺は頑張ってる」と全員が思っていることが
ますます致命的でした。
やらされ仕事で早朝の「報告会に出ろ」と言われたら、人は皆「そんなの結果だけ
メールくれりゃいいのに……」と思います。当然でしょう。
定時に電源が落ち、それが「ゲーム時間は18時まで! 残業して業務量を稼ぐの
はルール違反でしょ。長くやってりゃ誰でも出来るけど、それじゃダメです」
と、意図が伝わっておればいいけれど、単に「残業費やフロアの光熱費といった
経費節減です」と言われてしまえば「勝手なこといいやがって……おまえは暇
かもしれないが俺は忙しいんだ。家でやれってのかよ」という風になります。
表層だけとってみればいい事を色々やっているだけに、流石に過去を振り返らない
わたしでも惜しくてしょうがなくなりました。
社長がフロアをとことこ歩いてみんなに声をかけている前職、好きだったんです
けどねえ……。未だに前職の「卒業生」が寄ると触ると「大丈夫かなあ」と
心配するなんてのは会社の人徳ならぬ社徳以外の何者でもないと思うのですが。
いまの会社は起業から10年にも満たない若い会社なので人数も少なく、それ故に
コミュニケーションも良くとれ、柔軟性に富んでいる。参考にする点は多々
あったものの悔やむ点というのは正直少なかったのですが。
吉越社長の話を前職のみんなにも聞かせたい……。
■アイディアについて
早朝会議を初めとした色々なシステムを使ってゲームを運営しているトリンプ・
インターナショナル・ジャパンですが、それらルールはどこから思いついたのでしょう?
これが意外と他社からヒントを得た物が多いとのこと。
「アイディアなんてものはそうそう簡単にオリジナルな物が出るはずがない。
パクってもいいからとにかく一度決めたら徹底させる」
――正に継続は力なり、という訳です。思いつくのは簡単でも、徹底し続けること
は難しい、これは世の習いですね。
「どうしてもダメだと分かった時は可及的速やかに撤退すべきだが、そのトリガーと
なるべきデッドエンドは事前に決めておいて、それを超えない限りはとにかく徹底
してやる」なにか新しいシステムを導入した時、最初はどうしても従来のやり方が
慣れているだけに、揺り戻しの欲求が生まれます。ここを耐えて徹底するか、
やはり旧来のやり方が良かったと戻すのか、その見極めとするのがデッドエンド
の設定です。
単に猪突猛進にならないために、冷静に引いたデッドエンドがある。この損切り
のラインさえはっきりしておけばあとは施策徹底に専念出来る。
このデッドエンドの設定も「ルールの策定」ですから、経営側の仕事。
センスが問われる所と云えるでしょう。
座右の銘は「成功するまでやれば成功する」だそうです。「いついつまでに」とは座右の銘には入らないのですね(笑)。いや、タフでよい座右の銘かと思います。
■最後に
吉越社長の話はさらりと平易に聞こえて、その実徹底するためには大変そうな
ものばかり。成功の秘訣は「まずは出来るところからやること」。
気負っていては失敗するそうです。そりゃあ、そうですね。
わたしもまず、身の回りから少しずつトリンプ社員にも負けない仕事スピードアップに
向けて頑張ろうかと思います。
2007/12/05
16:37
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トリンプインターナショナル・ジャパン吉越LifeHackGTD