
実家のすぐ近くに、それほど大きくはない3軒の本屋があった(本当に、考えられないほどその書店たちは近接していたのです)。
ひとつは新旧問わず文庫を充実させ、ひとつは新刊に肩をいれ、ひとつは雑誌類を多く扱っている。そんなふうにして差別化をはかっていたように思う。
小学生の頃、学校が終わると、毎日のようにそれらの本屋に寄ってから家に帰った。
友達と野球やサッカーをして、へとへとになっても足を運んだ。
少ない小遣いのほとんどを本に費やした。
一番最初に自分のお金で買った本はヘミングウェイの「老人と海」だった(釣りが好きでしたし、なにより薄くて安かったのです。覚えていますが160円でした)。
何度もくり返し読んだ。
カバーは背中の上下からぼろぼろになっていった。
ところどころに、お菓子の滓が小さな油のシミをつくった。
ページもしわくちゃになって、厚みが2倍くらいになった。
そんな姿になっても、高校を卒業するまで、ずっと部屋の本棚に置いていた。
大学で実家を離れ、部屋は弟に占拠された。
私の大量の蔵書は弟に引き継がれた。
弟もこの160円の「老人と海」を何度も読んだらしい。