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月遅れイラスト:5月 < 一覧 > 「グラックの卵」

「スローターハウス5」

旅行・海外


原題「Slaughterhouse5」。カート・ヴォネガットの代表作です。名作です。

わたしが初めてヴォネガットに出会ったのは、
この「スローターハウス5」で、初めての出会いは18歳のとき。
それ以来、これまでも何度も何度も読み返した
マスターピースです。

「ヴォネガット」という、聞いたことのない外国人作家の小説は、
SFを沢山出しているハヤカワが版元でした。
SFに免疫のなかったわたしは、ちょっと躊躇しました。
が、カバー絵の和田誠さんのからりとしたタッチに後押しされて
購入に踏み切りました。当時、360円くらいだったような気がします。

そこに展開されていたのは、読んだことのないような物語でした。

今と過去と未来を行ったり来たりするうちに
どんどん無感覚に陥っていくビリー。
笑いも乾いて、絶望を通り越した虚無が広がっていました。

この作品は、第2次大戦中に、かつてヴォネガット自身が
捕虜として収容されていた東ドイツの美しい都市・ドレスデンに、
友軍による無差別空襲を受けた体験がベースになっています。

ヴォネガットは「スローターハウス」のなかで
「次は楽しい小説を書こう」と語っています。
しかしながら、全ての彼の作品には、悲しみがまるで
クッキーの生地に練りこまれたアーモンドパウダーのように広がっています。
そして、それを包み込むクッキーの生地は、ときどきぴりりと苦く、
そして深く深く甘くやさしい。

そのやさしさに取り付かれてしまった人は、ずっと
ヴォネガットがそばにいます。

時代が多少ずれてはいたけれど、少なくとも39年間を
同じ時代に生きることができて、ほんとうによかった。
ヴォネガットのような作家に出会えて、本当によかった。
どれを読んでも、涙がでる作家。そんな作家、ほかにいるでしょうか。

ヴォネガットの小説には、すべてに共通して
無辜の人々の頭上に爆弾を落とす無慈悲な行為に対する
怒りと疑問が織り込まれています。
どうしようもなく絶望感に包まれて、
絶望がどうしようもなくて、もう皮肉を言う言葉すらむなしく響いて、
なのにどうしようもない人類を愛してしまう自分に半ばあきれて…。

どうしようもないものへの、暖かなまなざし、やさしい言葉。

ハイホー。


「スローターハウス5」
カート・ヴォネガットJr.著/伊藤典夫:訳

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お仕事では主にかわいいイラストを描かせていただいていますが、趣味性の高いちょっとDarknessなオリジナル作品にぎゅうぎゅうと狭まれています。それはそれでとっても幸せ。


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