Interview: 切ったり折ったり、焦がしたり。「紙」を使った表現方法を探求するペーパーアーティスト/ 松本康孝

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loftwork.comでは、5/29〜6/18の期間『TRANS CRAFT, INTO ARTS』というテーマで、4人のクリエイターのアートワークを紹介しています。
本特集では、「クラフト」というジャンルの領域を越えて、新しい表現を見出す4名のアーティストたちにフォーカスしながら、あらゆる人々を夢中にさせるクラフトアートの魅力をひも解いていきます。
ここでは特集に関連して、4人のアーティストそれぞれに制作の背景についてインタビューします。


紙の特徴や質感を活かし、紙を切り折りして立体作品を作る、ペーパーアーティスト・松本さん。綺麗な折り目で作られたロゼットや、立体作品の中で度々登場する美しいカーブなど、私たちの生活の中で「紙」が身近であるからこそ、松本さんの作品は、どのように作っているのか想像できないものばかりです。
今回は、そんな松本さんに作品制作の背景を伺いました。


>>特集:TRANS CRAFTS, INTO ARTS – 熱狂するクラフトアート特集



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《桃太郎》



ー松本さんは、いかつい表情の人物から可愛らしいキャラクターまで、幅広い作品を「紙」で作っていらっしゃいますね。いつから、どんなきっかけで「ペーパーアーティスト」として活動をはじめたのですか。

高校は商業科で美術の授業もなく、大学では小学校の先生を目指していて、ずっとアートとは無縁の生活を送っていました。でも大学4年生のときに採用試験に落ちちゃって…。

これからどうしようかと思ったとき、小学生時代にテレビで観た「TVチャンピオン」という番組の「ペーパークラフト王選手権」が、なぜか急に頭の中に蘇ってきたんです。謎すぎますよね。

それで、大学を卒業する直前に、はじめて紙を切ってみたのが始まりです。それから、ペーパークラフトをはじめてから半年間だけ、ペーパーイラストレーションの第一人者であるAJIN氏に師事していました。

ペーパークラフトどころか、22歳までアートというものに触れたことがなかったので、右も左もわからず、すべてが大変で、そして新鮮でした。



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《ペーパーロゼット(ライオンver.)》



ーはじめて松本さんの作品は「本当に紙だけで作られているの?」と疑ってしまう程、ものの奥行きや質感が表現されていますね。事前に設計図やラフなどを作成するのでしょうか? また、さまざまな紙を使っていますが、つくるものを決めてから紙を選んでいるのでしょうか?

まず、立体になった完成作品を想定したラフを描きます。それをパーツごとに紙にトレースし、カットして、組み上げていきます。

紙は、作るものを決めてから選ぶときもあるし、その逆もあります。紙のストックはやたらあります。同じ種類の紙でも、厚みが違ったり。新商品の紙が発売されるとテンションあがりますね。



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《赤ずきん》



ー紙の厚みや質感で、印象がかなり変わりそうです。作品作りにあたって、紙以外に必要不可欠な道具や素材がありましたら、教えてください。

そこらへんで売っている、カッターや定規、ピンセット、ボンド、モデラを使っています。ハサミは、府中の金物屋さんでノリで買ったものを使ってます。5000円しました。



ー5000円!きっと切れ味が最高のハサミなんでしょうね…制作過程の中で、いちばん難しい部分はどんな箇所でしょう?今までの制作で「これはかなり苦戦した」という作品や体験談などありましたら、お聞かせください。

一度紙を切ったり貼ったりすると、作品の修正がしにくいところが、難しいというかおもしろさでもあります。

とくに苦労した作品といえば、紙を燃やしながら、焦げた陰影をつかってシーラカンスをつくったことがあります。なかなか紙が思うように燃えず、煙と二酸化炭素で吐きながら作りました。



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《シーラカンス》


ー本物の魚の骨のようなこまかい造形は、紙を焦がすことで作られていたんですね。全然紙に見えません…!自主制作と、クライアントからのオーダー制作のときとで制作行程や考え方に違いはありますか?

雑誌等の紙面上で使用されるオーダー制作は撮影ありきなので、写真になったときにどう見えるかを考えて作品を制作します。ぱっと見てCGと思われないよう、より紙の質感が出るように工夫しています。
また前述のとおり、作品が完成したら修正が難しいので、クライアントからの修正依頼が発生しないよう、コミュニケーションや仕様のすり合わせを繊密に行っています。



ー技術を磨く中で、目指すゴールはありますか?表現をするうえで、技術はどこまで探求するべきとお考えですか?

どこまで探求するべきか、ゴールは設定していません。技術の探求というよりは、表現方法を探求しています。例えば、左手でハサミを使ったり、テキトーに紙を切ったりしたほうが、おもしろい表現ができるかもしれない、と考えます。



ー松本さんは、作品を草木の中で撮影するなど、写真としての魅せ方も工夫していますね。作品撮影の工夫やコツを教えてください。

自然の中や紙以外の素材、またはデジタルと融合させることで、紙という素材がより引き立つと思い、そういったものと一緒に撮影しています。ただ、カメラ設定は完全に自己流で、とりあえず撮りまくって勉強しています。誰か教えてください。



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《スカル(木)》



ー紙と別の素材を、写真の中であえて対比させているんですね! おもしろいですね。
今後の活動にあたって、作っていきたいものやチャレンジしたいことがありましたらお聞かせください。


むかし、なにかのアート誌で「(この世には)まだまだ手付かずの表現方法はあるんだよ。」という言葉を読んだのが印象的で。ぼく自身も、まだまだ発見されていない手法や技法、表現があると思っています。

表現の幅を広げすぎるとブレちゃうのかもしれませんが、ぼくには紙しかないので、紙でできることはなんでもやろうと思います。

「ペーパー界に松本あり。紙と言ったら松本。」って言われたいです。



ー告知等ありましたら、どうぞ!

まだ先ですが、所属している日本ペーパークラフト協会主催の「第4回 ペーパーレストラン(10月29日〜11月5日)」に参加します。ペーパークラフト作家が25人くらい集まるマニアックなイベントです。
また、審査が通れば同じ会期で「UNKNOWN ASIA(11月3日〜5日)」に出展します。



ー紙による表現方法を探求している松本さん。これからの新しい作品も、とっても楽しみです!ありがとうございました。




Profile:

loft松本康孝
Paper Artist / Paper Illustrator 日本ペーパークラフト協会 会員。
紙という素材ならではの、色合いや質感、奥行きや温かみを活かし、「紙だからできること。紙でしかできないこと。」を表現する。紙萌え男子。ビールとビールかけが好き。シュークリームも好き。

Website: https://www.paper-matsumo.com
Portfolio: https://www.loftwork.com/portfolios/matsumoto3



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