Love Stationery へようこそ
文房具が大好きなカメラマン飯田昌之が見つけて撮影した写真と文章をお楽しみください
第23回は「原稿用紙」
小学校の時から「字が汚い」と言われ続けている
ミミズがのたくったような字は自分にしか解らない暗号のようだ
だからなのか、6歳の息子の書く文字に対しての読解力はかなりある
「頭の中に浮かんできた言葉たちを書き連ねるのが追いつかないから」といつも言い訳をするが
その実「他人に読ませるために書いていない」と言うのが本音だろう
小学校6年生の時の観劇感想文で、400字詰原稿用紙10枚を書いたが、担任からは「疲れる
から読んでない」と言われたのも忘れられない記憶だ(長すぎたことが原因だ。と思いたい)
キレイな文字に憧れがない訳ではない
が、文字を書くこと、そして文章を書くことが好きな事は確かだ
そこで興味を持ったものこそ、今回のモチーフである「原稿用紙」だ
自身は物書きではないので最近はめっきり使うことがなくなってしまった「原稿用紙」なのだが
机の横のキャビネットには数種類の「原稿用紙」が入っている
特に下調べをして買ったものではなく、銀座の伊東屋で現物を見て、興味を持った物を購入した
いわゆる「お気に入りの原稿用紙達」だ
今回、そのお気に入り達をモチーフにするにあたり、いろいろと調べてみた
するとどうだろう
こんなにも魅力とサブストーリーに満ちた世界が背景にあったではないか
さぁ前置きはこの辺にして「原稿用紙」の世界に足を踏み入れてみよう
調べてみて先ず気づいた事は「原稿用紙は日本語の為の特別な様式用紙である」という事だ
我々が思い浮かべる「マス目をきった原稿用紙」は世界に類を見ない独特のものなのだ
草書などが普段使いされていた江戸時代などの時代劇をみても、巻き紙にスルスル、ユラユラ
書かれている達筆な文字を見たことがあるだろう
そんな様式にはマス目はジャマだ
事実、日本で最初の原稿用紙と言われている鉄眼道光禅師の黄檗版鉄眼一切経(1681年完成)も
20文字10行を1頁とした形式を備えてはいるが縦の罫線が書かれているのみだ
現存する最古の原稿用紙は江戸時代後期(1827年)に漢文体で書かれた頼山陽の「日本外史」と
されているが、一般的になったのは明治時代中期と言われる
(漢文のように一文字づつ書く必要性があったからだと思われる)
書式の原理原則を発端とするマス目も印刷技術の発展と共に意味合いが変わってくる
活版印刷が普及し、原稿の文字量を正確に把握することが必要とされるようになると、規格化
された原稿用紙が多く使われるようになる
代表的なものは内田魚庵の作った19文字10行の用紙だとされる
夏目漱石をはじめとして他にも多くに作家たちに用いられた
(実際に漱石の「道草」の原稿は19文字10行の用紙に書かれている)
現行の400字詰原稿用紙になったのは計算がし易いからだろう
(200字詰や400字詰の方が切りが良いと感じるのは10進法が浸透しているからか)
面白いエピソードとしては、明治後期から大正期に中央公論の編集者だった滝田樗陰が原稿用紙
のマス目を守らない作家に対して400字詰原稿用紙に換算した分量しか原稿料を払わなかった
ことで、作家たちがマス目通りに原稿を書くようになったとの話もある
この他、原稿用紙の使い方や論文における原則など原稿用紙に関わる話題は枚挙にいとまがない
とは言え、ここでそれらを列記することは Wikipedia 丸写しなので、ご自身で確認されたい
(二つ折りの印としての魚尾などトリビアの宝庫だ)
さて、今回のモチーフである私の原稿用紙について書いてみよう
前述の通り、感性で買って気持ち良かったものは伊東屋オリジナル No.121 原稿用紙だ
ルビ罫はなく、横長のマス目が刻んである B5版200字詰
クリーム色も心地良く、大好きな万年筆もスラスラ進む(相変わらず読める字では無いが)
同時に見つけたのが満寿屋の原稿用紙だ
これが調べてみると、驚くほど有名で、川端康成や三島由紀夫などの文豪が愛した原稿用紙だ
(自らの無知を晒すが、高校生の時のこと故にお目こぼし願いたい)
私が好きなのは No.106 のルビ罫無しの300字詰
B5版を横に使うタイプでマス目は正方形だ
キッチリしたいという気持ちの表れが選ばせたに違いない(と思いたいものだ)
マス目があっても関係なく書き、縦書き用の用紙を横書きに使ったりしている方もいたりするなど
押し並べてシンプルにできている道具ほど、使われ方に驚くほどの多様性と懐の深さがある
用途が特化すればするほど、潰しが効かなくなるのは道具だけでなく人も同じか
-+-
今回もシンプルなモチーフを、シンプルに撮影した
今まで取り上げてきた中でも飛び抜けて趣味性の高いモチーフだが、自らの文房具好きの原点とも
言える素材なので、自分にとって大事なものだ
手触り、使用感など興味を持たれた方は、実際に文具店に行って確かめて欲しい
最後はお気に入りで













































