地域のために、日本のために。クリエイターができることとは?2009年に実施された、「Roooots 越後妻有の名産品リデザインプロジェクト」。20人のクリエイターが「大地の芸術祭」開催地である越後妻有地域の名産品28点のパッケージをリデザインし、「Roooots」という新しいブランドが生まれました。Rooootsブランド商品は、発売されると例年の数倍~20倍の売り上げを記録。2010年は場所を変え、「瀬戸内国際芸術祭」の開催地域の名産品をリデザインしています。さらに、Rooootsブランドは個々の商品のデザイン自体も高い評価を得ています。松本健一さんの「棚田天水米コシヒカリ 農の舞」が2010…

特集

2010/07/09 INTERVIEW INTERVIEW

地域×クリエイターが生みだしたもの | Roooots名産品リデザインプロジェクト座談会 (1/2)

地域のために、日本のために。クリエイターができることとは?

2009年に実施された、「Roooots 越後妻有の名産品リデザインプロジェクト」。
20人のクリエイターが「大地の芸術祭」開催地である越後妻有地域の
名産品28点のパッケージをリデザインし、「Roooots」という新しいブランドが生まれました。

Rooootsブランド商品は、発売されると例年の数倍~20倍の売り上げを記録。
2010年は場所を変え、「瀬戸内国際芸術祭」の開催地域の名産品をリデザインしています。

さらに、Rooootsブランドは個々の商品のデザイン自体も高い評価を得ています。
松本健一さんの「棚田天水米コシヒカリ 農の舞」が2010 One Show DesignでMerit賞を受賞。
黒柳潤さん「特別本醸造 天神囃子」がD&AD Awards2010で銅賞(in the book)を受賞しました。

そんな中、プロジェクトに参加したクリエイターは、何を見て、何を感じたのでしょう?
クリエイティブを必要としている地域とクリエイターとの協働が生みだす可能性とは?

今回は、越後妻有と瀬戸内の両方のプロジェクトに参加した3人のクリエイターと、
プロジェクトの仕掛け人である、ロフトワーク代表 林千晶、
NPO越後妻有里山協働機構 桑原さんが、
それぞれの視点からRooootsプロジェクトを振り返ります。

座談会 スピーカー

松本 健一(グラフィックデザイナー)

黒柳 潤 (デザイナー)

terai mariko (イラストレーター)

terai mariko (イラストレーター)

桑原 康介(NPO越後妻有里山協働機構)

桑原 康介(NPO越後妻有里山協働機構)

林 千晶(株式会社ロフトワーク代表)

林 千晶(株式会社ロフトワーク代表)



応募しただけで終わりじゃないのが、おもしろい

terai mariko さん
terai mariko さん

ロフトワーク林千晶(以下、林): みなさんは、なぜRooootsに応募しようと思ったのですか?

terai mariko(以下、terai): もともとロフトワークのスタッフの方から、お誘いを頂いたんです。芸術祭はずっと行きたくていけなかったのですが、採用されれば現地視察にも行けると書いてあったので応募してみようと。

松本さん(以下、松本): 僕の場合は、日経流通の記事がきっかけです。審査員が佐藤卓さんだと知って、応募しようと思いました。そのときに芸術祭のことも、ロフトワークのことも初めて知りました。

黒柳潤さん(以下、黒柳): 僕も松本さんと同じで、佐藤卓さん、秋田寛さんが審査員だというところで応募することに。それと、現地に行けることと、応募しただけで終わりじゃないところがおもしろそうだなと。

松本: 僕もそう思いました! 実際、デザインコンペというとデザインデータを提出して終わりというものが多い印象ですが、Rooootsでは現地立ち合いから印刷まで、全部関わることができるというところに惹かれましたね。

Roooots瀬戸内で、しょうゆの製造業者を訪問した際の写真。teraiさんは、伝統の製法を受け継ぐ職人さんらに温かく出迎えられたそう。
Roooots瀬戸内で、しょうゆの製造業者を訪問した際の写真。teraiさんは、伝統の製法を受け継ぐ職人さんらに温かく出迎えられたそう。

応募作品はすべてサイト上に公開され、応募データもだれでもダウンロードできるように。
応募作品はすべてサイト上に公開され、応募データもだれでもダウンロードできるように。

林: ロフトワークのコンペと、他のデザインコンペとの違いはどんなところでしょう?

terai:やっぱり、応募作品が全部ネット上で見られるというのはすごくいい。面白いですよね。(一同、うなずく)
Rooootsに参加した業者さんたちも、誰が選ばれるのだろうって、ずっと楽しみに見ていたみたいです。

桑原: そうそう、業者の方々、結構みんな見ているらしいですよ! 応募期間の終わりまで、なかなか作品が集まらないから、中には心配して電話をくれるひともいるんですよ(笑)

林:いつも不思議なんだけれど、公募だとみんな作品の提出が締切ギリギリなんだよね(笑) 越後妻有も締切3日前まで応募数が伸び悩んだので、募集期間を延長したら締切前日の夜から大量に作品がアップされてました。みなさん、やっぱり、締切からスケジュールを組むのかしら?

松本: 僕の場合は、締切があったら、できるだけぎりぎりまで考えたいですね。去年は、ちょうど仕事で忙しい時期と重なったので、締切りの延長があって助かりました。今回も、もしかしたら伸びるんじゃないかと思ってたら、伸びました(笑)

terai: …実は私、今回は絶対延びるだろうと思って、延長分も予定に組み込んでました!(全員、爆笑)

林: 次回は、絶対延長しませんから!!

デザインを立体的にとらえる

林: Rooootsではデザイナーが実際に業者の方々を訪問し、地元の方々の思いや抱えている課題を伺ったうえで、デザイン制作を進めました。意外だったのですが、みなさんのデザインは応募時点のイメージからはそれほど大きく変わっていない印象があります。業者訪問後に、どういうふうにデザインを決めていったんですか?

terai: はっか糖のパッケージは、応募作品の私の絵を業者の方がとても気に入ってくれていていたので、本来は箱の帯だけに使われるはずだったのが、箱の蓋全面にプリントすることになりました。

黒柳 潤さん
黒柳 潤さん

黒柳:僕の場合は、応募の段階はまだ完成されていない柔らかいデザイン案で、そのコンセプトが共感されればと思っていました。採用されてからは、コストや作業工程などを考えながら、柔らかい案をより現実的に「実装」できる形に落としていきました。
僕の場合と違って、松本さんの「農の舞」は応募の時点でデザインが詰められていて、すでにいちばんいい状態が見えていたのかな、という印象がありますよね。

松本: 僕は、応募段階で売り場に並んだときのインパクトを考えて、まず手に取ってもらうためにアイコン的な強さを意識してデザインしていました。現地視察では、宿泊先の三省ハウス(旧三省小学校)で実際に食べたご飯が本当においしくて「買って食べてもらえば絶対にファンになってもらえる」と感じたんです。それで視察後、 より手に取ってもらいやすくなるように、コピーを作り直しました。

黒柳さんが手がけた「天神囃子」のデザインの変遷。左が元のデザイン、中央が応募時のデザイン、右が最終形態。
黒柳さんが手がけた「天神囃子」のデザインの変遷。左が元のデザイン、中央が応募時のデザイン、右が最終形態。

松本 健一さん
松本 健一さん

林: ときにコピーも併せてプロダクトデザインですよね。やはり、最初に何かの強さが無いと、商品は手に取ってもらえないですから。

松本: 実は、これまではポスターデザインや中吊広告などを作ってきたのですが、パッケージを作ったのは、Rooootsが初めてでした。パッケージは箱状にしなければならないとか、中の袋にどんな素材を使うのかなど、いろいろなことに気を回さなければなりません。また、素材の値段が直接価格に影響してくるので、コストの問題についてもきちんと考えなければいけない。パッケージデザインは商品の値段にそのまま反映されてしまうので、めちゃくちゃ責任が重いなあと感じましたね。

桑原: 採用されたデザイナーのみなさんを見ていて、2つの意味で立体的にモノがとらえられていると思います。 ひとつは、パッケージデザインそのものが立体であること。そして、もう一つは地域や社会の中で、その商品の位置づけを多面的にとらえているということです。
デザインという行為そのものは誰でもできることですが、それをリアルなものとして商品化するということが重要です。プロダクトはアート作品とは違い、量産して流通に乗せる必要があります。みなさんの作品は、その過程までを含めた「デザイン」だったということなのではないかと思います。

松本さんのデザインによる「農の舞」。世界でももっとも有名なアワードのひとつ「2010 One Show Design」のMerit賞を受賞した。
松本さんのデザインによる「農の舞」。世界でももっとも有名なアワードのひとつ「2010 One Show Design」のMerit賞を受賞した。

つづいて、「Roooots」後の変化、そして、これからの活動について語ります。≫

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