[インタビュー]北川フラム:Rooootsプロジェクトの新しい挑戦(1/2)

瀬戸内から世界へ ―クリエイターと地域の協業によってうまれる新しい可能性

2009年夏に開催された『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』に合わせて実施された、アートで活性化を目指す地域とクリエイターの協働プロジェクト『Roooots 越後妻有の名産品リデザインプロジェクト』では、17品目の商品のパッケージデザインをオンライン公募し、29種類の商品がリデザインを遂げました。
また、Rooootsプロジェクトによってリデザインされた商品は、前回の芸術祭(2006年開催)と比べて3~20倍もの売り上げ増を実現しました。
そして2010年、越後妻有での成功を受け、新たなRooootsプロジェクトがスタートします。2010年7月19日より開催される第1回目の「瀬戸内国際芸術祭2010」において販売される名産品20種類のリデザインです。越後妻有に引き続き、瀬戸内でも芸術祭の総合ディレクターを務める北川フラム氏に、瀬戸内に対する思い、そして新しいRooootsプロジェクトへの期待を聞いてきました。
Rooootsリデザインプロジェクトの反響

林:前回の越後妻有では、Webを通じて全国のクリエイターと協働して17種類の名産品をリデザインするという初めての試みを行いましたが、その感想はいかがでしたか?
北川氏:その節は、クリエイターのみなさんには、本当にお世話になりました。越後妻有のRooootsでは、全国のデザイナーたちが関わったことがきっかけで、地元の人だけでは見いだすことができなかった特産品の良さが再発見され、デザインを刷新することで世界の人々にも通用するものへと変わり、広がっていきました。
また、参加したデザイナーにとっても越後妻有と出会う機会となり、芸術祭に参加するという新しいチャレンジとなったようです。結果的に、売り上げの増加にもつながったという点に、将来への可能性を感じますね。今年の瀬戸内国際芸術祭での展開が楽しみです。
林:そうですね。越後妻有の場合で重要だったのは、そこに地元の人と、デザイナーとのコミュニケーションがうまれたということです。
選ばれたクリエイターも、みんな並々ならぬ情熱で挑んでいたため、最後まで妥協しないで取り組んでいました。業者の人とも何回も何回もやり取りをして、商品のディテールひとつにまでこだわりぬいていました。業者の方々とクリエイターとが出会って、ひとつのものを作り上げていく。あのコミュニケーション自体に価値があるんだなって思います。

Rooootsブランドは大々的に展開され、好評を博した
「瀬戸内国際芸術祭」の背景

林:初めて開催される「瀬戸内国際芸術祭」ですが、どのような経緯で、北川さんはこの芸術祭にかかわってるんですか?
北川氏:もともと、福武総一郎さんが今から20年以上前から、地中美術館や、家プロジェクトなど、直島で現代アートを通じた取り組みを続けていました。一企業の取り組みとして、一つの地域を現代美術で復興するということは、世界でも類例を見ないプロジェクトでしょう。
僕がはじめて福武さんに出会ったのは、妻有に2003年に福武さんがいらっしゃった時です。妻有では公共事業によってアートによる地域復興に取り組んでいたため、そのことを福武さんがとても驚かれていました。
越後妻有が世の中から取り残された場所であったように、瀬戸内もまた、住民が高齢化したことに加え、産廃で汚染された島や、公害に苦しんだ島、ハンセン氏病の島など、近代化の過程で多くの傷を負ってきました。福武さんは、自分の生涯をかけても豊かな瀬戸内地域を再興したいと語ってくださいました。そこで、瀬戸内を成功させるためにも、まずは妻有を成功させて実績をつくろうということで、2006年・2009年は大地の芸術祭のために猛烈にがんばってくださったんです。
瀬戸内国際芸術祭の具体的な構想を伺ったのは、2006年の大地の芸術祭後でした。この芸術祭は、福武さんの念願のプロジェクトです。僕は、技術者としての立場から、精一杯手伝うつもりです。

林:なるほど。瀬戸内で芸術祭を開催する意義について、もう少し詳しくお話を聞かせてくれますか?
北川氏:日本はこんな極東の島国でありながら、海を使って豊かになった。しかし、それだけ豊かな海や島であっても、近代化につれて価値が内陸に集中し、海や島々が見捨てられました。これは日本のみならず、世界的な動きだったのだと思います。
少子高齢化が進み、近代の産業による負の遺産がある瀬戸内を再興していくということは、日本はもちろん、世界に向けて大きな希望を与えるだろうと思っています。瀬戸内の島々の中には、平均年齢75歳の島もあり、住人達はいずれ人がいなくなってしまうと思っています。
芸術祭の取り組みは、アートを通じて人と場所、人と人をつなげます。島々に雇用を作ったり、観光で人々を呼び寄せる効果があります。これは妻有でも同様ですが、住人たちにとってみれば、たとえそれが自分たちの子孫じゃないとしても、いろいろな島を訪れ、集落を維持し、家々を守ってくれる人が来てくれるということは、本当に嬉しいことです。地元の人には、そこにおもしろさや可能性を感じてもらえるだろうし、たくさんの人が訪れることで地元の人が自信を取り戻すことができるきっかけにもなるだろうと思っています。
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