古い工場から生まれた、上海の隠れ家的インテリア&アートスペース「BANMOO」


半年ほど前に上海に行った際、Isaac Maoさんという友人(著名な中国人ブロガーでベンチャー・キャピタリスト)に「上海で素敵なアーティストに会ってみたい!」とお願いしたところ、まっさきにご紹介頂いたのが、上海で最新のインテリアとアートを手がけるBANMOO(半木 http://www.banmoo.cn/)でした。
ローカル色あふれる野菜市場の前に立つ、古い工場をレノベートして作られたレンガ造りの建物にひっそりと、BANMOOは存在しました。実はかなりわかりにくい場所にあり、到着するまでに迷ってしまったほど。
そんな見つけづらい場所にあるBANMOOですが、以前上海の中心地で大成功しています。しかし、ビジネスサクセスは必要ではあるが、「もっとアイディアを実現できる場所でありたい」という思いから、現在のアートスペースを開設したそうです。
入り口を入ると、細い廊下の左右がそれぞれ黒と白の壁になっており、空中に照明に照らされてすうーーっと浮かぶ椅子とその影。

奥に進むと広々とした展示スペースが広がります。床がガラス張りになって下が覗けたるセクションがあるなど、空間の使い方に様々な工夫がこらされています。


上記写真の左右の柱に見えている白地に赤い文字は、この場所がシルク工場として使われていた頃の注意書き。古い工場跡地が持つ独特の雰囲気とシンプルでスタイリッシュな家具、そして美しく配置されたライティングによって、素敵な空間が演出されています。その素晴らしさは、思わず感嘆の声が上がってしまうほど。
こんな素敵なBANMOOの創始者で、自らデザイナーもある吕永中さんにインタビューを行うことができました。
作品の背景にあるストーリーをWebで発信
BANMOOは、中国語では「半木」と書きますが、その名前に隠されたデザイン哲学は、「満(完全)」に対する「半」という概念。「完全」な状態からエッセンスを抽出して「半」を取り出すことで、見る人は空間的・時間的な探検をすることができる自由さが生まれるといいます。
また、BANMOO の作品はオリエンタル(東洋的)な部分とユニークでクリエイティブなアプローチとの両方を持っている、という側面もあるそうです。そして、「木」には人の心を動かす力があると考えており、木を使った様々な表現がBANMOOの中から生まれているとのことです。

デザイナーやアーティストにとって、作品を見てもらうことは重要ですが、同時に作品の背景の「ストーリー」もわかってもらいたい。そのためには、インターネットは非常に有効なツールだと、吕さんは語ります。
吕さんは取材を受けるときには、必ず事前に自分のブログを読んでもらうように、記者の方にお願いしているそうです。そうすることで、取材をする側が作品の背景に対する理解を深め、取材時のコミュニケーションコストを減らすことができるというのです。
吕永中さんのブログ http://www.lvyongzhong.com/
家具の制作過程も見られる「家具」セクション、空間設計が見られる「空間」セクション、デザイン画なども見られる「展覧」セクション、吕さんの撮影した素晴らしい写真が見られる「撮影」セクションなどは中国語がわからない方でもお勧めです。
中国らしさと、新しいデザインの融合

一般的に、デザインは時の流れと共に変化し、時代が進むにつれてより成熟した姿へと変化します。たとえば、中国のデザイン史を遡ると、明代は文化や生活を反映した素朴なデザインの作品が多かったのに対し、清代になるとより複雑かつ洗練されたデザインが創られるようになりました。
吕さん自身もまた、デザイナーとしてのキャリアを通じて、次第に作品が洗練されていったようです。若い頃は今と違い、シンプルでありながらも、思いやメッセージがダイレクトに伝わるような、熱を帯びたデザインを創っていました。曰く、陰陽でいうところの「陽」が現れていたとのこと。しかし今では、ご覧のように「陰」と「陽」のバランスが取れたクールでスタイリッシュな作風が確立されています。

吕さんは自分の作品が「日本の作品ですか?」と聞かれることもよくあるのだとか。彼自身、日本のデザインは非常にクオリティが高いと認識しながらも、同時に静的で「平和的」だという印象を持っています。これからは、日本のデザインとの差別化を図るべく、よりダイナミックで中国らしい世界観を表現したいのだそうです。
中国では政治的な問題により文化が途絶えてしまった時期がありますが、吕さんはそのときに失った伝統的な中国文化を取り戻しつつ、現代的なテイストを取り込んだ新しいデザインに取り組みたい、と語っていました。
10年後の理想像
吕さんは、今の中国社会の風潮に対して問題提起をしたいと考えています。この30年、中国では物理的な豊かさへの関心が高まり、お金ばかり気にする傾向が強まってきました。その結果今の中国人からは精神的な部分が失われつつあり、自分たちはクリエイティブを通じてその精神を取り戻したい。そんなフィロソフィー(哲学)がBANMOOにはあるそうです。
また、「自分達がビジネス上で成功はすることはできるだろう。だが、本当にやりたいことは次の世代を担う若いデザイナー達がもっと成功できるようにすることだ」という願いから、上海で最も有名な建築・デザイン大学で教鞭をとっています。今後は、若者達へのメッセージをどんどん伝えていきたい、と語ってくださいました。
最後に、吕永中さんとのインタビュー動画をご覧ください。
BANMOOの場所はこちら。
本当に素敵なスペースなので、上海に旅行の際はぜひ探してみてください。
上海市长宁区万航渡路1384弄12号(近华阳路)湖丝栈创意园一号楼一楼,200051
1/F, Building 1, No.12, Lane 1384, Wanhangdu Rd. (near Huayang Rd.) Shanghai, 200051
≫BANMOO homepage

Related article
-
あたらしい一年を「笑顔」ではじめよう | Smile2012
Top | Works 2012年1月、ロフトワークドットコムを「笑顔」でうめつくします! 2011年に起こった出来事を心にとどめながら、あたらしい一年を前向きに過ごしていきたい。 そのために、私たちができることはなんだろう? loftwork.com は、2012年をひとりでも多くの人が笑顔で迎えることができるようにという願いを込めて、“Smile2012”キャンペーンを行います! 今回のキャンペーンでは、「あたらしい一年を笑顔ではじめよう」をテーマに、5つのトピックを用意しました。もちろん、クリエイターのみなさんに参加いただく企画もあります。 世界を変える、なんて大きいことではありませんが…
2011/12/23
-
Let’s make! | 3.5×2 Identity:手渡すコミュニケーションアイデア プロトタイプ制作
レーザーでつくる!受賞アイデア名刺のプロトタイプ 2011年9月の末から始まった「3.5×2 Identity:手渡すコミュニケーションアイデア」コンペティション。長期に渡り開催してきたこの企画もいよいよ最終目的でもあるプロトタイプ制作の段階に入りました。 「3.5×2 Identity:手渡すコミュニケーションアイデア」は、一番身近にある伝える為のコミュニケーションツツールである「名刺」を、もっと自由でクリエイティブな表現を込めて自己表現して欲しい!という思いからスタートしました。 これまで、審査協力をいただいた協賛企業、審査員の皆さま、作品を応募いただいたクリエイターの皆さま、投稿作品のお…
2011/12/23
-
はじめてでも作れる、インフォグラフィックス | ツタグラ ワークショップ レポート
インフォグラフィックスを作るには? をお伝えします! 「デザインの力を借りて、みんなで未来を考える」そんな目標を掲げてスタートした、ツタグラ・プロジェクト。でも、いざ課題を目の前にして「よいインフォグラフィックス(=つたわるグラフィックス)をつくるにはどうしたらいいの?」そう思っている人も少なくないはずです。 そこで、インフォグラフィックスの第一人者、Tube Graphics 代表 木村博之さんを招いて、インフォグラフィックスづくりを体験するワークショップを実施しました。テーマは「タイの洪水が世界の電子産業に与える影響」をインフォグラフィックス化するという、初心者にはちょっと難しそうな内容で…
2011/11/24