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2009/02/25 EVENTS EVENTS

パリで見つけた、クロスメディアな映像制作会社

旅をしていると、色々な出会いがあります。今回、パリ旅行で出会ったのは gaiaという映像制作会社を18年経営してきたGuilhem Pratz(ギレム・プラッツ)さん。

ギレム・プラッツ氏
ギレム・プラッツ氏

ギレムさんは番組制作のほか、テレビにおけるリッチメディアデザインや、ブランドコミュニケーションに携わっており、ここ6年間は「映像の歴史」というテレビ番組を105話制作していたそうです。今回、そんなギレムさんのオフィスにお邪魔し、インタビューをさせて頂きました。

今回の英語のインタビュー映像は、こちらでご覧頂くことが可能です。

マルチメディアなストーリーテリング

現在、ギレムさんは「ストーリーテリング」(さまざまな情報をストーリーの文脈上において伝えるという方法)による表現に一番の関心があるそうで、「Synchronicité」(シンクロニシティ:因果関係を持たない複数の事象が、何らかの意味を伴って偶然的に同時発生することを意味する、分析心理学の用語)という スリラー のテレビ番組制作にとりかかっています。

この番組の特徴は「マルチメディア」であることと、「ストーリーが中心にある」ということ。 テレビ向けの映像コンテンツの他に、携帯電話用のコンテンツや、登場人物のインターネット上の行動に合わせた、ブログを始めとする数々のウェブサイトが準備 されています。それらのテレビ番組とモバイルコンテンツとインターネットコンテンツを全てgaia社で制作しています。

制作進行表。上から順に、ブルーの枠がテレビ、緑がネット、赤がモバイルコンテンツ。
制作進行表。上から順に、ブルーの枠がテレビ、緑がネット、赤がモバイルコンテンツ。

「クロスメディア」と言われる作品はたくさんありますが、テレビで番組がメインでネットはプロモーションでしかないという 物が殆ど。

ギレムさんはテレビ局はインターネットとのメディアミックスを怖がる傾向があり、その理由は視聴率低下を恐れているからであると考えています。そのため、テレビで本筋の「ストーリー」が進行し、ネットは補助的な役割しか果たせない番組が多い。
しかし、本作品ではテレビでも携帯コンテンツでもネットコンテンツでも同時発生的に出来事が起きており、「ストーリー」が進み、全てがリンクしており、それらが相乗効果を産むとギレムさんは考えています。

テレビを見ていてある登場人物が好きだと思った場合、テレビの中では数分しか出演しないキャラクターでも、ネット上には何時間も見られる豊富なコンテンツが準備されています。例えば、登場人物の一人は政治家と いう設定ですが、彼のブログ、家族の写真、息子のfacebookのアカウントまであるという手の込みよう。実は、テレビ放映開始より先に、ネット上のコンテンツはアップロードされていくこともあるのだとか。ある週のテレビ放送で「××に出かける」と登場人物が言った場合、 その人物の行動がネット上では次々に発生し、それらを踏まえて翌週のテレビ番組のストーリーが進む、といった具合です。

また、携帯コンテンツは短くてリアルタイム性・速報性があってインタラクティブにもできるという利点があります。視聴者は携帯コンテンツを地下鉄の中で受信し、何かが起きたと知って慌ててネットで調べ始め、テレビの放映日にテレビを見る。。。といった体験を通じて、どんどんストーリーにのめりこんでいく、という狙いがあります。
週に一回の決められたスケジュールで放映されるテレビ番組だけでなく、携帯向けコンテンツやインターネット向けコンテンツでストーリーが(フィクションながら)リアルタイムにどんどん進んでいくことにより、よりリアルな体験を視聴者ができる番組になるとギレムさんは考えています。

イベント発生の図。真ん中の黒いtvマークが第一クールのテレビ放映だが、それより前に下の「インターネットコンテンツ」のイベントが発生しているのがわかる。
イベント発生の図。真ん中の黒いtvマークが第一クールのテレビ放映だが、それより前に下の「インターネットコンテンツ」のイベントが発生しているのがわかる。

この作品において最も重要な「ストーリー」は全てのメディアの中間地点にあり、テレビコンテンツも、モバイルコンテンツも、ネットコンテンツもストーリーを紡ぎ合い、視聴者に伝えるための等しく大切な手段だといえます。第一クールは6話の予定で、その後には映画が続き、更に第二クール、第三クールと続く予定です。

スリラーのストーリーラインの他に、登場人物が夢や記憶を共有するという設定もあり、複雑で面白い作品になりそうです。

8人のライターによる共同作業の脚本

この作品の脚本は、実は8人のライターの共同作業で作られています。

壁に一面に貼られたポストイット。この一つ一つがシーンのアイディア、ネタです。8人のライターがどんどんアイディア出しをしていき、どのシーンをど の回に割り振っていくかの構成を共同で決めていき、8人がストーリーの構成に同意できて初めてシナリオを書き始めます。構成制作期間には、2ヶ月間、週に3 回×半日の セッションを行っていたそうです。

一人の脚本家が全てのシナリオを書くのに比べて、この「共同作業方式」はスピードも速く、クオリティも高く仕上がるとのこと。gaia社ではこの方式で4ヶ月で20話分のシナリオを書くというスピードを実現しています。

アイディア創出オフィス

オフィスの中には様々な面白グッズがありました。「アイディア出しが僕の仕事。インスピレーションが得られるようにとオフィスにはたくさんの本やインスピレーションを得られそうな物を置いているんだ」と語るギレムさん。私が気になったのはこちら。

天井にまで届くようなクレーンにつけられたテレビと人形。テレビの中の基盤を引っ張り出してあるようですが、「普通のテレビだよ!古いけどちゃんと動くよ!」とのこと。

次回作、「Neige」 コラボクリエイター求む!

Guilhemさんが次に予定している作品は「Neige」といい、日仏合作の作品になる予定です。

「Neige(雪)」は19ヶ国語に翻訳されている名作で、19世紀の日本を舞台にしたラブストーリー。ヨーロッパやフランスから見た理想的な美しい日本を描きたいといいます。
≫「Neige(雪)」のストーリー

ギレムさんは、この作品で実写にアニメーションを混ぜるなど、日本のクリエイターの方にも加わってもらって作品を制作できないかと考えているそうです。ロフトワーク登録クリエイターの方で興味がある方がおられましたらこちらのフォームからご連絡ください。(2009年3月2日(月)まで)

なお、今回のギレムさんとの「出会い」は、パリ大好きな林信行(Nobi)さんのご紹介でお会いした、パリ在住のNOUVEL OCEAN SARLの富樫一紀さんのご紹介で実現しました。Nobiさん、富樫さんすばらしい出会いをありがとうございました!

なお、ギレムさんのプロジェクトについて日本語で詳細を聞きたいという方がおられましたら、富樫さん(kaz[at]nouvel-ocean.com)までお問い合わせください。

(全ての写真、動画はCreative Commons Attribution-NonCommercial-No Derivative Work 2.1 日本ライセンスBY Fumi Yamazakiです)

※本インタビューは2008年12月に実施したものです。

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