[クリエイター実態調査] キャラクター制作 ホントのところ
ニュースをにぎわす平城遷都1300周年のキャラクター騒動や、彦根城のひこにゃんなど…日本はキャラクターの話題が尽きません。つい、先日もこんなゆるキャライベントが開催されるなど、近年のゆるきゃらブームに伴い、日本全国からキャラクター市場には、ますます熱い注目が集まっています。
以前、ロフトワークの特集では、メディアファクトリー社にキャラクター制作のポイントを教わりました。そして、今度は実際に制作している側の立場からキャラクター制作の実態を解明すべく、ロフトワークは登録クリエイターの皆さんを対象に、キャラクター制作に関するアンケート調査を行いました(2008年9月実施)。総勢200人のイラストレーター、グラフィックデザイナーの方々から得た回答結果からは、キャラクター制作にまつわるリアルな実態が見えてきました…。
(イラスト:Sei)
実は結構多いんです! キャラクター制作のお仕事
70%以上のクリエイターが「制作経験アリ」

アンケートに参加していただいたクリエイターさんのうち、80%以上のクリエイターがキャラクターを「制作したことがある」または「コンペに参加、あるいは打診があったことがある」と応えており、かなり多くのクリエイターの方がなんらかの形でキャラクター制作に関わった経験があるようです。また、実際に制作をした事があると応えた方は70%を超えており、ロフトワークに登録しているクリエイターの中で、キャラクター制作の経験がある方が非常に多いということが伺えます。
また、制作したキャラクターの利用媒体も多岐にわたっています。数値を見ると、印刷物とWebサイトがそれぞれ30%以上と一般的ですが、グッズや、ぬいぐるみ・着ぐるみなどの立体物になるものも多いようです。
アンケートの回答内容を見ると、約7割のキャラクター制作経験者が、自分が制作したキャラクターが複数の媒体で使用されていると応えています。逆に言えば、制作を依頼する側も前提としてキャラクターをさまざまなシーンに登場させることを念頭においているようです。
某地方自治体の交通局のキャラクターを制作したというケースでは、バスの外装・内装のほかに、チョロQにもなった(!)という話も。作る側が意識するべき点として、キャラクターは、さまざまな場面・媒体で使用できるシンプルなものが望ましい、ということですね。
キャラクターのデジタル化と新たな市場

また、キャラクターが求められている媒体は、時代に伴い、リアルからデジタルへと移行しつつあります。アンケートの結果を見ると、2006年以前に制作したキャラクターの利用媒体の割合はWebサイトと携帯サイトをあわせて4割弱程度だったのに対し、2007年のデータでは6割強に伸びており、キャラクターのデジタル化が進んでいることがわかります。
これは、企業のWeb戦略の1つとして「キャラクター」が注目されつつある、ということを示しているようです。特にモバイルサイトのキャラクターは倍に伸びており、モバイルビジネスの拡充に伴い、新たなキャラクター市場が開かれてきているといえるのかもしれません。
また、クライアントとなるのは、主に一般企業で83%。自治体や学校など、それ以外のクライアントの割合は低くなっています。
キャラクター制作の「困った…」エピソード

キャラクターを制作した経験のあるクリエイターの中で、74%の人が「困ったことがあった」と回答していることから、キャラクター制作には、ある種の難しさが伴うということが伺えます。そのなかでも特に多くのクリエイター(30%)から挙がったのが、「クライアントとの像合わせの難しさ」。
たとえば、「コンセプトがあいまいで、要望も不明確」「クライアントの組織内部でもさまざまな意見があった」「像が合わずに何度も作り直しをした」「クライアントの要望がコロコロ変わる」などなど…企業やサービスの「顔」を決めるキャラクターだけに、クライアントの社内調整も難しく、制作が長期化してしまう事も多いようです。
「クライアントとの像あわせ」と並んで多かった意見が「制作そのものの難易度の高さ」。プロモーションに使用されるキャラクターは、その商品やサービスの良さや役割をわかりやすく表現することと、キャラクターを魅力的に見せることをどうやって両立するか、ということが課題のようです。
いわば、キャラクターは「生き物」であるため、背景となるストーリー設定もかなり綿密に行われることが多く、矛盾が生まれないよう気をつけなければなりません。また、キャラクターはさまざまなシーンで活躍します。表情やポーズ、シチュエーションなども非常に多くのバリエーションが求められると同時に、そのような多様な動きに耐えられるようなデザインで作る必要があります。このように、キャラクター制作は一般的なイラスト制作と比べて、配慮する点が多いということが、制作者を悩ませる要因のようです。
また、中には契約内容や著作権に関するトラブルの報告も。法律の専門知識が必要になってくるだけに、個人クリエイターにとってはクライアントとの交渉が非常に厄介になります。
Creator’s Comments: クライアントとの像あわせで「困った!」
クライアントから引き受けるときに困ったのは、迷われてはっきりしたビジョンが決まらず、こちらの提案も聞かず製作途中に二転三転したり、あからさまに有名キャラをパクれと言われることですね(汗)(一般企業のキャラクター制作)
最初は顔だけの話でしたが、後に胴体も描いて欲しいと言われました。(飲食店のキャラクター制作)
クライアント側の要望が、漠然としたもの、抽象的なものが多いです。例えば、ただ「かわいい」とか「目立つ」とか。それを組み上げて、期待以上のものを作らなければならないことが苦労しました。(一般企業のキャラクター制作)
キャラクター提案自体が「動きながら考える」といった状態だった為、後から後から追加を出されて他の仕事との調整に手こずりました。(自治体のキャラクター制作)
Creator’s Comments: キャラクター制作そのものの難しさ

一番気を使ったのは、やはりキャラクターそのもの。対象としていた20代30代の男女にとって「なんだか気になる」存在を誕生させなければ!!と何度も何度も書き直しました。(キャンペーンキャラクター制作)
(キャラクター作りをするときに)いかにパチンコ台とスロット台をかわいく見せるかに悩みました。(パチンコ台販売代理店のキャラクター)
キャラクターは、笑った顔、怒った顔など様々な表情を見せるのですが、その変化をどう描くか…と言うのは悩みました。(シュミレーションゲーム キャラクター制作)
Creator’s Comments: 契約・著作権のトラブル

勝手に改変されたこと。納品するデータのひとつひとつに、改変不可の旨や注意書きを書いておいたのですが、勝手にポーズを改変された広告が出されました。複数の広告代理店が広告制作に携わっていたため、私からは直接の注意はできませんでした。(キャンペーンキャラクター制作)
著作者人格権の解釈について双方の誤解があった。財産権の譲渡のはずが、勝手にアニメ化をされようとして、同一性保持権に触れるから新たな契約が必要だといったら権利はこちらにあると主張された。(ゲームのキャラクター制作)
やってよかった! キャラクター制作 ハッピーストーリー
さまざまな困難やリスクが潜むキャラクター制作ですが、もちろん「やってよかったこと」もたくさんあります。今回のアンケートでは「キャラクターを制作・提案したときに良かったことや得をしたことはありますか?」という質問には、90%以上の人が「あった」と回答。このことからも、キャラクター制作はクリエイターにとってプラスになるケースが多いようです。
Creator’s Comments: クリエイターとしての「やりがい」「達成感」

プロデュース的な側面を持つキャラクターの開発は、大きな責任・プレッシャーが悩みのタネですが、出来上がったときに大きな達成感を得ることができるようです。また、たくさんの人々が関わるプロジェクトなだけに、自分ひとりではなしえないことができるというのもキャラクター制作の魅力。苦労したからこそ、キャラクターに命を吹き込まれた瞬間の喜びは、ひとしおです。
やはり、出来上がったものを見て「かわいい!」とか「面白い!」と言ってくれる事。これに尽きます! もともと何かを仕組んで人を驚かせたり笑わせたりするのが好きなんです。「割に合わないな~」という仕事でも、ついつい必要以上に気合を入れて創ってしまいます。(TAMA さん/地元情報誌のキャラクター制作など)
このキャラクターデザインの仕事に携わることができたということが私にとってとても貴重なものだと思っています。(…中略…)描いた絵を動かしてもらえたことも、沢山の方に見てもらえたことも喜ばしいことです!!(hossy nakkie さん/Webサイトのキャンペーン用キャラクター制作)
「キャラクターは、企画と連動しているものだと思います。一人で考えて作り上げるものもあるとは思いますが、色々な人と話し合って、キャラクターが生き生きしたものに変わっていく時がうれしいし、楽しい時です。(SATOMI+ さん/アパレルや文具・ゲーム関連など)
Creator’s Comments: たくさんの人に見てもらえる、認知が広がる

自分の創ったものがたくさんの人に見てもらえるというのも、キャラクター制作の魅力。キャラクターが特にメディアに露出する場合は、エンドユーザーの反響を知ることができるというのも、キャラクター制作の特徴ではないでしょうか。中には、「同人誌で萌えキャラになっていた」というオドロキの反響も! いずれにしろ、キャラクターがたくさんの人に愛されるのは、クリエイター冥利に尽きるというものです。
制作したキャラクターがサイトの一部となり、いろいろな人の目に触れて役に立っていると実感できる時に、製作過程でどんな苦労があっても良かったと感じられます。(昴 さん/企業のイメージキャラクター制作)
グッズなどにもなり視聴者から応援の声を頂いた事です。(あんころもち さん/TV番組のキャラクター制作)
着ぐるみがゆるキャラ選手権の予選に出場してTV出演してくれた。キャラクターがプリントされたバスが街中を走ってた。同人誌で萌えキャラ化されてた。(吉川えいと さん/ 自治体のキャラクター制作)
地元のテレビ局のキャラクターということもあって、知ってくれる人が声をかけてくれたりする事は、素直に嬉しいです。…得した面でいうと、賞金を頂いてビックリしたということ、あとは、このことによって「キャラクターを作ってる人」というイメージが強いみたいで、キャラクター制作の依頼を頂いたりすることかなと思います。(さかほしけい さん/ローカルTV局のイメージキャラクター制作)
Creator’s Comments: スキルアップ、新しい仕事領域へ
キャラクター制作は、コンセプトやストーリーの提案が求められたり、権利についての交渉ごとが発生したりで、通常のイラスト制作よりも難易度の高いケースが多いのが一般的。それが逆に経験やスキルアップにつながったというコメントも多く見受けられました。クリエイターとしての提案力や発想力につながるようです。
また、着実に実績を作ることで次の仕事につながるパターンも。クライアントからキャラクターの評価が高い場合、その後の展開により追加発注があったり、制作実績ができることで他のキャラクター案件で採用されやすくなったりということもあるそうです。
色々な方にキャラクターを見てもらえる機会が増えたこと。それにより、キャラクターを使ったデザインの仕事なども増えたこと。(N.kamichika さん/商品プロモーション用キャラクター制作)
本業はライターと編集なのですが、元々絵が得意だったので、コンペでは私がイラストを描きました。その後も、私に描いて欲しいと依頼されたので、新たに仕事の幅が広がりました。それが一番良かった点です。(tango さん/某社・会報誌のキャラクター制作)
稟議に通り、グッズキャラクターだけでなく、マスコットキャラクターに採用となったので、自分の気に入ったキャラクターが世に羽ばたいていくのが嬉しく思いました。それを機に、また濃厚な付き合いができるようになりました。学校へ行って勉強してるわけでもなく、ただ好きだからという理由で描いていたイラストが喜ばれる存在になったことが本当に自分にとってもプラスになったと思います。(Ceryna さん/キャンペーンキャラクター制作)

キャラクターの影に、ストーリーあり
「クリエイターの側から、キャラクター制作の実態を探る」をテーマにした、今回のアンケート調査。キャラクターはイラストレーターやグラフィックデザイナーにとって花形の仕事のひとつですが、実はそれぞれのキャラクターの背景には秘められた苦労や感動の物語が隠されているのです。
アイデアをしぼり出したり、クライアントとの像合わせや権利をめぐる難しい交渉など、大変なことや苦しいこともたくさんありますが、できあがった後には大きな達成感と喜びが待っている。キャラクター制作は、そんなクリエイティブの醍醐味が凝縮されたプロジェクトといえるのかもしれません。
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