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2011/02/28 INTERVIEWS INTERVIEWS

[クリエイターへの10の質問] 3Dキャラの錬金術師― イラストレーター 吉井 宏

クリエイターへの10の質問 -イラストレーター 吉井宏-

NTTドコモのキャラクター「ひつじのしつじくん」や、「東京コンテンツマーケット2009」のグランプリや「アヌシー国際アニメーション映画祭2010」ノミネートなど、国内外の数々のアワードで評価を受けたCGアニメ「ヤンス! ガンス!」のキャラクター・アートワークなど、その独自のキャラクターデザインで活躍中の吉井 宏さん。
グラフィックデザイナー、イラストレーター、3DCGクリエイターとしてのキャリアを着実に積みつつ、大好きなオリジナルキャラクターをいきいきと制作している吉井さんに、気になる「10の質問」をしてみました。

その答えからは、「かわいい」だけでは語りきれない、個性的なキャラクターをつぎつぎと世に発信しているそのものづくりの源泉、そして、ものづくりへの深い愛情が見えてきました..



Q1. 肩書を教えてください。また、どうして今の仕事をするようになったのですか。

基本はイラストレーターですが、キャラクターデザインをメインに、アニメーションや立体制作などいろいろやってます。

名古屋でデザイン事務所に勤めた後、1990年に上京して数年間は主にパッケージデザインと関連のイラストを描いていました。その後2004年までくらいはPainterというペイントソフトを使い、出版系の2Dイラストを多くやっていました。

紙粘土などの立体イラストの実在感や説得力に惹かれていて、デジタルで紙粘土イラストをできないかと思ったことがきっかけで、3DCGの世界に足を踏み入れました。2005年頃までに3DCGにほぼ完全に移行し、現在のような仕事内容になりました。3DCGによるキャラクター制作と、その周辺のあれやこれや、って感じです。




Q2. ご自身の作品のなかで、今もっとも見てほしい作品・活動を3つ、紹介してください。

1. アニメーション「ヤンス!ガンス! MEAT OR DIE」

キャラクターデザイナー・美術監督として関わったショートアニメシリーズです。秋元きつねさんと村山太さん(ウサビッチのプロデューサー)が組んだ作品で、少人数のチームに参加させていただきました。キャラクターや小道具や背景の街など、画面に登場するほとんどのオブジェクトをデザイン・作成しました。

01yans-gans





2. NTTドコモ iコンシェル「ひつじのしつじくん、メイドのメイちゃん」

携帯電話の画面に常駐してユーザーの生活に密着した便利情報を案内してくれるサービスiコンシェルのキャラクターです。季節やイベントに応じたコスプレやアクションもします。
僕的には3DCGでキャラクター制作をするようになって初めての全国区のキャラクターです。ほとんど誰でも知っていただけているようで、作者としてはうれしい限りです。こちらも、画面に出てくるローポリモデルやアクションの演出も僕がデザインしています。今も新しいコスプレやアクションをどんどん追加しています。メイドのメイちゃんもよろしく!

ひつじのしつじくん、メイドのメイちゃん



3. フィギュアや立体の制作

3DCGのキャラクターを立体出力したものを原型に仕上げ、少量生産のフィギュアにしています。また、比較的大きな一点物の立体作品も作りかけています。作業スペースの問題からなかなか思うように作れないのですが、今のところ楽しみとしてやっています。
フィギュアや立体の制作



Q3. 「ヤンス!ガンス!」を制作しているときに、いちばん印象的だった出来事を教えてください。

秋元きつね氏に言われた、「もっと吉井さんらしさを出してください!」

主役の2匹は、何十何百とスケッチや試作キャラを作りました。その時、秋元きつね氏によく言われたのがこの言葉です。でも、自分ではどこをどうすれば吉井作品らしさを強調できるかわからないんですよ。自分としてはそれが「自然な形」なので。自分の作風をより客観的に考える契機になりました。

また、自分で苦労してキャラクターを動かさなくても、アニメーションの専門家のプロがちゃんと動かしてくれるんだ!って当然のことに感動しました。確かに生きて動いてる! それまで自分のキャラは自分で動かすのが当然だったので、そんなことがとても新鮮でした。



Q.4仕事の中で、最も楽しい瞬間はどんなものですか? また、そのおもしろさを教えてください。

ドローイングしていて、これだ!という形を見つけたときは本当にうれしいです。

いいと思ったスケッチを3DCGでモデリングしたりレンダリングするのは、スケッチでの感動を証明する作業のようなものです。思った通りのブッ飛んだ仕上がりだとシアワセで何度も何度もうっとり見ちゃいますね。その意味では、スケッチの段階でほとんど完成してるとも言えます。逆に、いいと思ったスケッチが3DCGになってみると、あまり面白くないということもよくあります。



Q.5 作品のアイデアを考えるために工夫していることや、日ごろから気をつけていることなどはありますか?

TDW(The Daily Work)という毎日更新で何か描いたり作ったりしてWebにアップするシリーズを、もう12年もやっています。

THE DAILY WORKS

初期はPainterで2Dの絵、2004年頃からほとんど3DCGキャラクターです。さすがに毎日はキツイですが、それでも最近も一年に百数十個くらい作っています。

最初は、アイディアを一日一個、簡単に形にして記録しておこうという趣旨でしたが、途中からそれ自体が面白くなってきて、僕の創作活動の中心になっています。こうしてたくさん作っておいたキャラクターから仕事につながっていけば、TDWだけやって楽しく暮らせるかも、という目論見もあります。実際にここから発展した仕事は多いです。

こうしてTDWをやっていると、いつも何かヒントになるものはないかと目がキョロキョロいつも探すようになります。いろんなものからインスピレーションを得ます。ただし、既存のキャラクターやフィギュアなどは直接的すぎて参考になりませんね。動植物や工業製品や服飾などからヒントを得ることが多いです。ドローイングは普段から大量に描いていて、すぐにでも3D化できる形状アイディアのストックが何千個もあります。



Q.6 これまでどうやって自身のスキルアップを図ってきたのですか?

スキルアップというより、流れでそうなった感じです。

グラフィックデザイナー時代は覚えることが多かったですし、イラストはアクリル絵具で苦労して描いてました。Macを導入した90年代前半はまだデジタルデザインの黎明期だったので、ソフトの機能はシンプルでわかりやすかったです。今、ゼロから習得する人は大変でしょうね。

ペイントソフトPainterについての本や記事を書く機会が多く、必要にせまられていろんなことを覚えたりTIPSや裏技を作ったりしました。ややこしそうな3DCGは本格的にやるつもりはありませんでした。ところが、ZBrushという3DCGの常識とかけはなれたソフトでの造形に夢中になってそれが仕事になり始め、やはり必要にせまられて、より一般的な3Dソフトを使うようになりました。ここ数年はLuxology modoという3Dソフトを使っています。

アニメーションなど作ったこともなかった頃、ゲームのキャラクターを作る仕事の中で「アニメーションもできますか?」と聞かれて「はい、できますよ!」とはったりで答えてから、急いで本格的な3Dアニメーションソフト3ds Maxを買いに走り、大急ぎで習得。なんとか納期に間に合わせたこともあります。漠然と学習するよりも、必要に迫られる環境にいるほうが身につくかもしれませんね。



Q7. 仕事場(ワークスペース)を見せていただけますか?

一昨年に引越したとき、足の踏み場もないほどあった本やモノを相当処分しましたので、今はスッキリしています。ここ半年は書籍の自炊*をがんばったので、さらに本が減りました。机は18年も使ってるものです。
真っ白な部屋の大きな真っ白の机の上にノートパソコン一台、というのが理想ですが、そこまではとてもとても。普段はせっかくきれいに片付けてあるのに、立体制作をすると部屋がゴチャゴチャの工場のようになってしまうので、作業を始めるのを躊躇してしまうのが困りものです。



Q8. 仕事をするうえで欠かせないモノを見せてください。


(左) ScanSnap(A3スキャナの上)

ScanSnapは初代機種から使ってます。当時から場所を取る雑誌などをスキャンして処分しており、自炊の走りだったですね。これは今使っている機種ですが、大量のドローイングを素早くスキャンする目的で購入しました。同じく、A3スキャナも主にドローイングのスキャン用。A4スキャナではスキャンできない大型本をスキャンする目的もありましたが、それはほとんどやってないです。ScanSnapは昨年のiPad購入以来、自炊に大活躍です。すでに400冊近く処理しました。大きな本棚が丸ごと四次元ポケットに吸い込まれた感じです。

(中央) ドローイングの紙、iPadとタッチペン

5年ほど前に紙とペンの便利さに目覚めて以来、A5サイズの紙に薄い青で1cmグリッドをプリントした用紙にドローイングしてました。それ以前はデジタルオンリーでした。iPadでドローイングすることも多くなってましたが、最近、最高のiPad用ペンを見つけまして、あまりの描きやすさに再びデジタルオンリーに戻りつつあるところです。

(右) 携帯電話と「ひつじのしつじくん」ストラップ

なにしろ、自分の作ったキャラクターがケータイの画面でうろうろ歩いていたり、情報を教えてくれたり、電車が止まってることを知らせてくれたり、コスプレしてたりするんですよ! キャラクターの作り手としては究極のシアワセ! もちろん、iコンシェルは外出時には欠かせない便利なサービスですし。



Q.9 これから新しくチャレンジしてみたいことを教えてください。

「ヤンス!ガンス!」で小規模チームでアニメ制作する流れをひととおり経験できたので、自分の企画でやってみたい気持ちが高まってます。

ストーリー作りは苦手なのですが、自分のキャラクターを活躍させてみたくていろいろ考え中です。また、立体制作のほうも、今までのように中途半端な楽しみだけでやるのではなく、流通や展示など、ちゃんとした落としどころを見つけなきゃと思っています。



Q.10 最後に、何か言いたいこと、PRや告知など、ご自由にお書きください。

昨年末、iPhone/iPadアプリをリリースしました。「REAL STEELPAN」、スティールドラム/スティールパンというカリブ海の楽器のアプリです。

本物のスティールパンをずっと持っていたのですが、自分では演奏できませんでした。アプリとしてなら手軽でおもしろそう!ってことで、スタジオを借りて一音ずつ録音・サンプリングし、iPhone/iPadの画面を叩いて演奏できるものにしました。プログラムは専門家にお願いしました。

スティールパンはロール(連打)の音が特徴的なのですが、それも再現しました。反応速度を上げたアップデート版も作成中です。自分で言うのもアレですが、とてもいい音です。ぜひ試していただきたいです。

≫「Real Steal Pan」アプリを詳しく見る

RealSteelPan


脚注:

*自炊…電子ブックリーダーやパソコンの利用者自らが業者に頼まず紙媒体である書籍や雑誌をまるごと裁断機で切断しスキャナーを使ってデジタルデータに変換する行為を指す(Wikipedia)




プロフィール

吉井 宏 (よしい・ひろし)

イラストレーター、キャラクターデザイナー。1962年愛知県生まれ。グラフィックデザイナーを経て90年よりフリーイラストレーター。03年頃から始めた3DCGによるキャラクター制作に熱中し、アニメーション制作にも取り組んでいる。数年前から立体制作も始め、少量生産のレジンフィギュアも発売。「タブレット& PainterClassicで絵を描こう」(IDGジャパン)などPainter関連の5冊の著書がある
http://www.yoshii.com
≫吉井宏 -ロフトワークのポートフォリオを見る

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